米中貿易額の激増:垣間見えるバイデン政権の本性
では、われらが日本はどうだろうか?
何と言っても日本の最大の貿易相手国は中国だから、中国にとっての「4大貿易相手国・地域」は「ASEAN、EU、アメリカ、日本」で、「一国」としては、アメリカの次に存在感を示している。
日本から見れば対中輸出の方が多く、中国からの輸入は大きくないのは、日本経済がコロナにより打撃を受けていて輸入するゆとりがないからだろう。コロナによる打撃が大きいのは、日本政府の無為無策、右往左往による失政が招いた結果だ。
それでも半導体の需要に応じて、中国における半導体チップ製造に欠かせない半導体製造装置などを、日本はせっせと中国に輸出している。
バイデン政権は対中強硬策の中で「制裁」という手段は使わないとしているが、トランプ政権による「対中制裁」は今も生きており、それまでをも「取り消す」とは言っていないので、中国は半導体チップ製造に相当に苦労している。
しかし電気自動車製造に欠かせない28nm(ナノメータ)級の半導体はエンティティ・リストに入っていなかったので、台湾のTSMC南京工場は「制裁」に引っかかることなく稼働し、どんどん投資を増やしているような始末だ。28nmに関しては中国のSMIC(国際中芯)も製造できるようになっているので、製造過程に必要な日本の半導体製造装置は引っ張りだこなのである。
そんな訳で、日本の増加率はそこそこながら、中国の技術発展を支えており、「中国を孤立させるはず」のQUAD(クワッド)(日米豪印四ヵ国枠組み)は、一体どこに行ったやら、というのが現状だ。
「一帯一路」もRCEPも堅実と胸を張る中国
中国の貿易状況に関して、中国政府側は「一帯一路」もRCEPも堅実に発展していると胸を張っている。
「一帯一路」に関してはASEANやEUとの貿易額および増加率が大きいことを例に挙げ、RCEPに関してはASEANと日本、韓国などとの貿易額を、その例に挙げている。
アメリカでさえこうなのだから、もともと親中の自民党&公明党が政権与党である日本はもとより、媚中外交を貫く韓国などは、ほぼ中国の言いなりと言っても過言ではなく、これでは日米韓がこぞって中国経済を盛り上げているようなものだ。
本来なら抑制できたはずのコロナ感染の拡大を自ら招いたような日本は、日本国民の命を犠牲にしながらIOCの言うことには従い、中国の経済発展には貢献しているのが現状だ。
もとよりバイデン政権には期待してないが、最新の貿易高データに接し、何とも暗澹たる思いを拭えない。
※当記事は中国問題グローバル研究所(GRICI)からの転載です。
[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社、3月22日出版)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。
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