パレスチナの理解と解決に必要な「現状認識」...2つの国家論は欺瞞だ
The False Green Line
この間、イスラエルは巨費を投じてヨルダン川西岸の入植を進め、点在する入植地の連結に邁進してきた。結果、今やそこに住むパレスチナ人のコミュニティーは寸断され、互いの行き来もままならない。俯瞰すれば、西岸ではパレスチナ人とイスラエル人が共存しているように見えるだろう。しかし現実には、イスラエル人が完全な市民権を享受しているのに対し、パレスチナ人は権利を制限された2級市民にすぎず、全く市民権を認められていない場合すらある。
イスラエル領内に住むパレスチナ人は国家に脅威を与える存在と見なされ、法の下でイスラエル人と平等な扱いを受けることはない。ヨルダン川西岸で暮らすパレスチナ人はイスラエル軍の支配下にあり、イスラエル政府に対しては何も言えない。エルサレムにいるパレスチナ人は完全に隔絶された状況に置かれているし、ガザ地区はイスラエル軍によって包囲され、そこに暮らすパレスチナ人は巨大な青空監獄に閉じ込められているに等しい。
グリーンラインの甘い誘惑
これがイスラエル人とパレスチナ人の現実なのだが、国際社会の一部は今も1949年の停戦協議で設定された双方の境界線、いわゆるグリーンラインにこだわっている。当時、紙の地図に緑のインクで乱暴に引かれた線だ。それは初めから地図上にしか存在しなかったが、今は地図からもどんどん消えている。
イスラエルがヨルダン川西岸とガザ地区、そしてエルサレムを占領した数カ月後の1967年10月30日、当時のイスラエル入植地委員会を率いていたイーガル・アロンは、イスラエルの公式地図からグリーンラインを削除するよう指示している。
国際法の下で、グリーンラインは「一時的」な占領地を示すものとされていた。しかしイスラエル国家はそれを無視し、占領という言い方も拒み、その地を恒久的に併合する方向へ突っ走った。
ある意味、グリーンラインには甘い誘惑があった。例えば国際法の正義を掲げて、いつの日かパレスチナ国家を建設する土地を地図上に明示する役割があった。だが現実には、それは国際社会が責任を放棄し、政治的に不都合な現実から目をそらすために利用されてきた。
例えばアメリカ。民主党の支持層にはイスラエルの対パレスチナ政策に反発する層が多い。そのため、同党の幹部らはイスラエル政府への不快感を示す手段として「二つの国家」論を口にしてきた。