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インドの空港倉庫に国際支援物資置き去り 「どこに配られるか誰も把握していない」

2021年5月12日(水)19時45分
青葉やまと

しかし、日々数千人が命を落とすなか、こうした支援物資の多くはタイムリーに医療機関に渡っていない。米CNNは「ここで一つ問題がある。現場の病院はより多くの支援を切望しているが、こうした貨物の大半は空港の貨物倉庫に、何日にも渡って留め置かれているのだ」と述べる。

現地メディアが州政府担当者の話として報じたところでは、最初の緊急支援物資が到着してから配布が始まるまでに1週間以上を要したという。多くの感染者を抱える南西部ケララ州の保健医療相は英BBCに対し、少なくとも5月5日の時点で「いまだ何の支援物資も受け取っていない」と語った。

支援物資の分配は混乱し、誰も計画を把握していない

原因の一つは、国際社会から一挙に寄せられた支援に、現地の枠組みが対応できなかった点にある。インド保健省は分配のガイドラインを作成するのに7日を要したが、この間に2万3000人以上が死亡した。

インド政府は物資滞留の報道を強く否定し、配給を行うための「合理的なメカニズム」を導入したと述べている。しかし保健省が発表する数字でも、すでに物資を受け取った医療施設の数は38に留まる。

分配が始まってからも、新たな「物流の悪夢」が発生しているとCNNは報じる。物流計画には、インド政府、インド赤十字社、税関、保健省、政府系医療メーカー、そして地方への輸送を担当する軍など、多くの母体が関わる。各主体が総力戦で物資を届けようとしているが、関与する機関の多さが混乱に拍車をかけている状態だ。

さらに、各国から寄せられた物資は規格も納品単位数も統一されていない。そのうえほとんどのケースで、支援元の国が作成したリストと実際に届いた物資の数量および種類が一致しない。そのままでは計画通りに配分できないことから、本来不要な調整を待つ結果となり、物資は空港倉庫を発つことができないでいる。

情報不足も不安を増長している。NPO代表のパンカジ・アナンダ氏はBBCの取材に対し、「救援物資がどこへ行こうとしているのか、誰もまったく把握していないように思われる」と語った。大手私立病院などが加盟するインド医療連盟の会長も、「(物資が)どこへ配給されるのかいまだ情報がない」と情報不足を訴える。

現地では可能な限り多くの人命を救うため、必死の活動が展開されている。混乱はやむを得ないが、救える命を物資不足で救えないでいる医療現場からは悲痛な声が上がる。

CNNは、官僚主義や人的ミスが遅配の原因としてあり得るとしたうえで、「しかし現場の人間にとっては、このような可能性を弁明することにほとんど意味はない。彼らが政府に望むのは、現状より迅速なアクションを取り、日ごと数千人が亡くなっているICUに支援物資を届けることだ」と述べている。

インド政府はすでに酸素関連物資を最優先で処理するよう税関に求めており、イギリスからの物資は15分で関税手続きを通過したという。人々に酸素を届けるべく、未曾有の事態のなか物流面での試行錯誤が続く。

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