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米中「環境分野で和解」は幻想か...両国が妥協できない最大の障害は?

LIMITS TO CLIMATE COOPERATION

2021年5月11日(火)19時50分
ミンシン・ペイ(本誌コラムニスト、クレアモント・マッケンナ大学教授)

相互の信頼の欠如を考えれば、米中は何かを成し遂げるのではなく、特定の行動を控えることで協力できるだろう。その第1原則は、人権や貿易、安全保障といった、両国関係が対立する問題を気候変動対策とリンクさせないことだ。

そうした抑制は、特に中国に求められる。中国指導部は、どうやら気候変動対策でバイデンのそれ以外の政策を変えられると考えているらしいが、そのような関連付けは非生産的だと、習は認識するべきだ。

米国内の超党派の反中感情のせいで、バイデンの手は縛られている。そして中国が頑強な態度を取れば、気候変動に対処する世界的指導者としての習の信頼を損ないかねない。

気候変動に関する今後の多国間交渉で米中は、排出ガスの削減目標や途上国への財政支援など個別の問題について、相互の批判を健全な科学的、経済的、倫理的な根拠に基づくものに限定するべきだ。より重要なのは、第三者が合理的、現実的、有益だと考える代替案を同時に提示することだ。

世界は気候変動対策での米中の協力を必要としている。しかしどんな幻想も抱くことはできない。望めるのは、両大国が自制を保つこと、地政学的な優位を競って人類を危機にさらすのを避けることだ。

©Project Syndicate

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