「おもてなし」の裏で「ひとでなし」──ラサール石井さんが難民いじめを批判、元五輪選手も入管に危惧
"おもてなし"と"ひとでなし"
今月6日の会見では、弁護士や支援団体関係者の他、ラサール石井さんもマイクを握った。ラサールさんは東京オリンピック招致の際の「おもてなし」のアピールにかけ、「表では"おもてなし"、片方では入管で"ひとでなし"」と日本政府の矛盾ぶりを皮肉った。さらに「難民認定申請を99%却下するのは100%受けつけないに等しい」と日本の難民排斥ぶりに苦言を呈した。
ウィシュマさんの妹達もオンラインで会見に参加、発言しているのはラサールさん (筆者撮影)
実際、東京五輪は、難民その他帰国できない事情のある外国人の人々に対する入管側の姿勢にも大きな影響を与えている。2018年4月26日付けの警察庁・法務省・厚生労働省の三省庁による合意文書『不法就労等外国人対策の推進(改訂)』では、"実際には条約上の難民に該当する事情がないにもかかわらず、濫用・誤用的に難民認定申請を行い、就労する事案"があるとした上で"政府は、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて「世界一安全な国 日本」を作り上げることを目指している"として取り締まり強化に積極的に取り組むと書かれているのだ。
なお、「難民認定申請の濫用」は法務省・入管の常套句であるが、日本の難民認定審査の異常さを棚に上げての悪質なレッテル貼りだろう。ミャンマーやシリア等の明らかに危険な状況から逃げてきた難民認定申請者すら認定されないことが多く、他の先進国では大勢、難民認定されているトルコ籍クルド人にいたっては、過去一度も認定されないのが日本の難民認定審査の現実だ。
三省庁の合意文書(部分) オリンピックに向けての治安維持のため、難民申請者を含む在日外国人の取締りを強化 網掛け部分は筆者
今月6日の会見には、バルセロナ五輪(1992年)のテコンドー日本代表であった高橋美穂さんもメッセージを寄せた。高橋さんは「ウィシュマさんの事案で国際基準からかけ離れた日本の入管行政、難民認定率の低さを知った」「今必要なのは人間の尊厳」と延べ、入管法「改正」案について「根本からの見直しを求めます」と訴えた。
入管法の改正案は、現在、衆院本会議で審議されており、政府与党は早期の採決を目指しているが、野党側はウィシュマさん事件の真相もまだ明らかになっていないと反発を強めている。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
[執筆者]
志葉玲
パレスチナやイラクなどの紛争地での現地取材、脱原発・自然エネルギー取材の他、米軍基地問題や貧困・格差etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに寄稿、テレビ局に映像を提供。著書に『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共編著に『原発依存国家』(扶桑社新書)、『イラク戦争を検証するための20の論点』(合同ブックレット)など。イラク戦争の検証を求めるネットワークの事務局長。オフィシャルウェブサイトはこちら。
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