オーストラリアで囁かれ始めた対中好戦論
Why Australia-China War Talk is Rising Between the Two Nations
問題の発言が飛び出したのは、第一次世界大戦の大規模軍事作戦で死亡した兵士を追悼するアンザック・デーの4月25日。ピーター・ダットン国防相が、台湾をめぐる中国との衝突の可能性を「軽視すべきではない」と警告し、マイク・ペズーロ内務長官は演説の中で、インド太平洋の「自由国家」に再び「戦争の足音」が迫っていると述べた。
またオーストラリアの複数の報道機関が今週、オーストラリア軍のアダム・フィンドレー少将が2020年の非公開のブリーフィングの中で、中国と衝突する「可能性は高い」と述べていたことを詳しく報じた。
オーストラリアの野党・労働党は、アンザック・デーの一連の発言を批判。中国外務省は、オーストラリア政府が「対立を引き起こし、戦争の脅威を煽ろうとしている」と非難した。
だが3月には、米海軍のフィリップ・デービッドソンとジョン・アキリーノ――米インド太平洋軍の前司令官と現司令官――も同じような発言を行っていた。デービッドソンもアキリーノも、中国が台湾統一の野心を加速させていると警告し、10年以内に台湾に侵攻する可能性もあり得ると述べた。
「台湾有事」なら衝突の可能性あり
ワシントンのベテラン政治アナリストたちはこの見解について、誤解を招くおそれがあるし、中国政府の持つ手段や動機を十分に考慮に入れていないと指摘している。だがオーストラリアでは、自分たちがなんらかの紛争に関わるとしたら、台湾絡みの可能性があると示唆する声もある。
台湾の呉釗燮外交部長(外相に相当)は何度もオーストラリアのメディアの取材に応じ、台湾が中国から受けている軍事的および経済的な圧力について詳しく説明。台湾近郊で軍備を増強している中国の「最終目的」についても、はっきりと述べてきた。
彼はオーストラリアン・ファイナンシャル・レビュー紙に対して、台湾とオーストラリアの関係は深化しているが、オーストラリアに対しては「精神的な支え」以上の支援は期待していないと遠慮がちに述べた。
オーストラリアもアメリカも、中国が台湾を攻撃した場合の防衛義務に言及した法律はない。アメリカの台湾関係法は、台湾の防衛に必要な武器の売却を可能にするものだが、戦争となった場合にアメリカが台湾を軍事支援しなければならないとは明記していない。