最新記事

豪中関係

オーストラリアで囁かれ始めた対中好戦論

Why Australia-China War Talk is Rising Between the Two Nations

2021年5月7日(金)16時21分
ジョン・フェン

問題の発言が飛び出したのは、第一次世界大戦の大規模軍事作戦で死亡した兵士を追悼するアンザック・デーの4月25日。ピーター・ダットン国防相が、台湾をめぐる中国との衝突の可能性を「軽視すべきではない」と警告し、マイク・ペズーロ内務長官は演説の中で、インド太平洋の「自由国家」に再び「戦争の足音」が迫っていると述べた。

またオーストラリアの複数の報道機関が今週、オーストラリア軍のアダム・フィンドレー少将が2020年の非公開のブリーフィングの中で、中国と衝突する「可能性は高い」と述べていたことを詳しく報じた。

オーストラリアの野党・労働党は、アンザック・デーの一連の発言を批判。中国外務省は、オーストラリア政府が「対立を引き起こし、戦争の脅威を煽ろうとしている」と非難した。

だが3月には、米海軍のフィリップ・デービッドソンとジョン・アキリーノ――米インド太平洋軍の前司令官と現司令官――も同じような発言を行っていた。デービッドソンもアキリーノも、中国が台湾統一の野心を加速させていると警告し、10年以内に台湾に侵攻する可能性もあり得ると述べた。

「台湾有事」なら衝突の可能性あり

ワシントンのベテラン政治アナリストたちはこの見解について、誤解を招くおそれがあるし、中国政府の持つ手段や動機を十分に考慮に入れていないと指摘している。だがオーストラリアでは、自分たちがなんらかの紛争に関わるとしたら、台湾絡みの可能性があると示唆する声もある。

台湾の呉釗燮外交部長(外相に相当)は何度もオーストラリアのメディアの取材に応じ、台湾が中国から受けている軍事的および経済的な圧力について詳しく説明。台湾近郊で軍備を増強している中国の「最終目的」についても、はっきりと述べてきた。

彼はオーストラリアン・ファイナンシャル・レビュー紙に対して、台湾とオーストラリアの関係は深化しているが、オーストラリアに対しては「精神的な支え」以上の支援は期待していないと遠慮がちに述べた。

オーストラリアもアメリカも、中国が台湾を攻撃した場合の防衛義務に言及した法律はない。アメリカの台湾関係法は、台湾の防衛に必要な武器の売却を可能にするものだが、戦争となった場合にアメリカが台湾を軍事支援しなければならないとは明記していない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ザポロジエ原発「ロシアの施設」、他国への管理移転不

ワールド

EU通商担当委員、米高官と会談 トランプ関税回避目

ワールド

米情報機関「中国は最大の脅威」、AIで米凌駕 台湾

ビジネス

NY外為市場=ドル/円軟調、関税導入巡る不透明感で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 4
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 5
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 6
    トランプ批判で入国拒否も?...米空港で広がる「スマ…
  • 7
    「悪循環」中国の飲食店に大倒産時代が到来...デフレ…
  • 8
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 9
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中