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進む自衛隊とミャンマー国軍の将官級交流 クーデター首謀者も3度来日、安倍首相と会談

2021年5月4日(火)10時25分
水島了(日刊ベリタ記者)

こうした将官級交流の一環としてではないが、これと並行してミンアウンフライン総司令官の来日が繰り返されるようになる。交流プログラムの突破口となった2014年の初来日以降、同司令官は17年と19年と計3回来日している。日本財団の笹川会長と日本ミャンマー協会の渡邊会長の招待による17年以外は、防衛省の招待である。彼はその都度、安倍首相、菅官房長官、茂木外相ら政権中枢と会見、会談をおこなってきた。注目されるのは、14年と19年という来日時期はいずれもミャンマーの総選挙の前年であり、翌年の総選挙へむけた国軍のうごきをふくめた政治情勢についてなんらかの意見交換がなされたとしても不思議ではないだろう。

将官級交流に加えて、もう一つの重要な取り組みがある。それは自衛隊による能力構築支援事業だ。防衛省のホームぺージによれば、2014年以降、様々な支援が行われてきた。潜水ダイバー向けの治療を行うための「潜水医学」、天気図の読み方などを学ぶ「航空気象」、東日本大震災の教訓を生かした「人道支援・災害救援」、航空機の航行に関する国際法規を学ぶ「国際航空法」、そして「日本語教育に関する教育環境整備支援」。いずれも、支援内容自体は極めてまっとうで人道的であり、ミャンマー国軍の発展を願う自衛隊の真摯な態度が伝わってくる事業だ。

ミャンマー国軍の思惑と日本の武器禁輸緩和

ここまで、日本側の視点で日本とミャンマーの軍事協力を見てきた。「将官級交流」では防衛省がミャンマー国軍幹部を丁重におもてなしし、「能力構築支援事業」では自衛隊が培ったノウハウが余すところなく伝授された。一方で、ミャンマー国軍側は何を考えていたのだろうか? ここに、NIKKEI Asiaに寄稿された一つの論考がある。

「ミャンマーにとって、日本とのより強力な軍事関係は、中国への依存を減らし、武器購入源を多様化するための努力の一環である。ミャンマーは現在、武器の供給を中国に大きく依存するのではなく、ロシア、イスラエル、ウクライナなどから武器や装備を購入しようとしている。武器輸出の制限が解除されれば、日本はミャンマーに軍事装備を販売することもできるだろう」(Nikkei Asia 2016年7月27日)

軍備増強の本音が丸出しではないか。この寄稿の筆者は新潟にある国際大学で国際関係論を教えるミャンマー人教授で、ミャンマー国軍に非常に近いことで有名な人物だ。

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