マスク不要のCDC勧告、米でも異論噴出 ワクチン未接種でもマスク不要との誤解も
不着用が増えているが、本当に接種は済んだのか?
職場に限らず、混乱は市民生活にも波及している。ニューヨーク・タイムズ紙は「わずか14ヶ月にはアメリカではめずらしい習慣だったマスク着用は、アメリカの通常の生活の一部になった」と振り返る。しかし、今回マスク不要がアナウンスされたことで、一般市民の間では歓迎する人々がいる反面、混乱も起きているという。
これまでであれば多くの人々がマスクをしており、そうでない人は公衆衛生の基準を遵守していないことが明らかであった。しかし今では、マスク不着用の人々が公共のイベントでも増え始めているという。ワクチンを済ませたためマスクを外しているのか、それとも接種済みを装っているのか、はたまた最初から指針を守るつもりがないのか、判断がつかない状態だ。
このように着用・不着用が混在する状態は、パンデミックが収束するにつれ、いずれ避けられないことは確かだ。しかし、ワクチン接種がほぼ全員に行き渡った時点で指針を公表すれば、混乱を最小限に抑えることができたはずだ。
未接種でもマスク不要との誤解さえ生まれている
ペンシルバニア大学ウォートン校で行動経済学を研究するキャサリン・ミルクマン教授はNPRに対し、CDCはワクチン普及の動機付けを狙っていたのだろうと語っている。接種後にマスクを外せるとアピールすることで、より多くの人々が好んで接種を受けるようになるとの目算だ。
しかし、ワシントン・ポスト紙によると、曲解が進んでいるようだ。「ワクチン接種が完全に済んでいれば」との前提を無視し、すべてのアメリカ国民がマスク不要になったかのような理解が先行してしまっているという。米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は、「人々は誤った解釈をしているのだと思います。すべての人のマスク義務を廃止するかのように思われていますが、そうではありません」と述べるなど、補足に追われている。
オバマ時代に労働安全衛生局を率いたデイビッド・マイケルズ氏はポリティコ誌に対し、「これは公衆衛生学上の失敗だ」と嘆く。現在過半数の人々が完全なワクチン接種を済ませていない状態で、接種済みの人々を前提にしたメッセージを発信してしまった。「CDCは混乱を引き起こし、パンデミックに終止符を打つための我々の努力を後退させている」と氏は厳しく批判している。
日常生活を取り戻す象徴になるはずのアナウンスだったが、時期尚早なマスク不要論に対し、これまでの努力が水泡に帰すのではないかとの不安が生まれているようだ。
Dr. Fauci Says Public Is Misinterpreting Latest CDC Mask Guidance