なぜエルサレムの衝突が、ガザでの7年ぶりの大規模戦闘にエスカレートしたのか
東エルサレムで数週間にわたってパレスチナ人とイスラエル警察の暴力的な衝突が続き、パレスチナ自治区ガザにおいてパレスチナ武装組織とイスラエル軍による7年ぶりの大規模な戦闘を引き起こしている。写真はガザ地区で、イスラエル軍による空爆を受けた住宅に集まる人々(2021年 ロイター/Ibraheem Abu Mustafa)
東エルサレムで数週間にわたってパレスチナ人とイスラエル警察の暴力的な衝突が続き、パレスチナ自治区ガザにおいてパレスチナ武装組織とイスラエル軍による7年ぶりの大規模な戦闘を引き起こしている。
既に何十人もの死者が出ている衝突の核心にあるのは、ユダヤ教とイスラム教、キリスト教それぞれの聖地であるエルサレムを巡るイスラエルとパレスチナの長年にわたる緊張関係だ。
イスラエル、パレスチナ双方とも戦闘長期化に備えつつあるように見える。事態をエスカレートさせている幾つかの要素を以下に示した。
ラマダン以後の抗議行動と土地権利巡る判決
イスラム教徒のラマダン(断食月)が始まった4月中旬以降、東エルサレムで夜間にパレスチナ人とイスラエル警察の衝突が起きた。警察側がパレスチナ人の集会を阻止するため旧市街の入り口の1つ、ダマスカス門にバリケードを設置して封鎖したためだ。
パレスチナ人はバリケードを集会の自由に対する制限措置とみなし、警察は秩序維持のために配置についていると主張した。
さらに緊張を高めたのは、東エルサレムの住宅で暮らす複数のパレスチナ人家族の立ち退きを求めてユダヤ人が起こした訴訟を巡り、イスラエルの裁判所がユダヤ人の主張を支持する判決を下したことだった。
衝突は旧市街のアルアクサ・モスクがある地域にも拡大。アルアクサ・モスクは、イスラム教にとって3番目に神聖とされ、イスラエルとパレスチナの対立に最も影響を受けやすい場所にある。この地域や旧市街近辺の衝突により、ここ数日で数百人のパレスチナ人が負傷している。
越えてはならない一線
ガザを実効支配するイスラム組織ハマスや他の武装組織はイスラエルに対して、エルサレムで起きた暴力的な衝突は「レッドライン(越えてはならない一線)」であり、イスラエル警察がアルアクサ・モスク境内への侵入をやめない場合、ロケット弾を発射すると繰り返し警告していた。
そしてイスラエルが1967年の中東戦争で東エルサレムを奪回したことを記念する「エルサレム・デー」だった今月10日、ハマスと武装組織「イスラム聖戦(PIJ)」はエルサレムと周辺地域に向けてロケット弾攻撃を行った。
ハマス指導者のイスマイル・ハニヤ氏は、イスラエルがエルサレムとアルアクサで先に武力を行使し、ガザに飛び火させたと非難。「それがもたらす結果に責任がある」と強調した。
その数時間以内にはイスラエルの軍用機がガザの軍事目標に対する空爆を開始し、軍当局は人口密集地なので民間人の犠牲者が出ることは否定できないとくぎを刺した。