最新記事

軍事

南シナ海で中国の空母の演習を「監視」する米海軍艦船の動画が話題に

U.S. Navy Warship Shadows China Aircraft Carrier in Video

2021年4月22日(木)18時20分
ジョン・フェン
日本の宮古海峡を通過する中国空母・遼寧

日本の宮古海峡を通過する中国空母・遼寧(4月4日) Joint Staff Office of the Defense Ministry of Japan/REUTERS

<西沙群島付近で漁業従事者が空母「遼寧」の演習風景を撮影・投稿。遠くから演習を見ている米艦船に注目が集まる>

今週、中国のソーシャルメディアにある動画が投稿された。中国軍の空母が南シナ海で軍事演習を行う様子を捉えたもので、遠くにはそれを監視する米海軍の駆逐艦が映っている。

中国の漁業従事者が動画投稿アプリの「快手」でシェアしたこの動画は、4月16日に人民解放軍が西沙群島(パラセル)で演習を行った際の様子を撮影したもので、戦闘機J15(殲15)が空母「遼寧」に着艦する様子を捉えている。

動画の投稿者は、中国海軍の052D型駆逐艦1隻が近くを航行する動画も投稿したが、注目すべきは遠くから中国の空母群を監視している艦船の方だろう。複数の専門家は本誌に対し、この艦船は、米海軍のアーレイ・バーク級の駆逐艦である可能性が高いと指摘した。ラジャラトナム国際学院(シンガポール)の研究員であるコリン・コーは、特徴的なマストの形とシルエットが見てとれると説明した。

姓を「マー」とのみ名乗る投稿者によれば、彼がこの動画を撮影したのは4月16日の午前と午後だ。彼が乗るトロール漁船は、翌日からの実弾発射を伴う演習に備えて、西沙群島から離れる準備をしていた。

「全ての漁船が、16日の夜にこの海域から離れた」と彼は述べ、また中国軍がリンカーン島(彼は中国名で「東島」と呼んだ)の携帯電話基地局からの電波を遮断した後は、携帯電話が通じなくなったとも語った。彼が動画を投稿したのは、中国南部の三亜市にある自宅に戻った後のことだ。

「反対側から撮影した映像」も

マーが快手に投稿した動画は、中国軍の戦闘機が、中国初の空母である遼寧の甲板に着艦するありのままの様子を捉えたことで注目を集めた。動画の空母が遼寧であることは「16」という艦番号から確認でき、また「スキージャンプ」と呼ばれるそり上がった形の飛行甲板からも見てとれる。

米駆逐艦の存在に気づいた一部のソーシャルメディアユーザーは、問題の動画が投稿されたことで、中国の空母群の居場所が特定されてしまうと指摘。これは「国の機密」を漏らす行為だと非難し、マーに動画の削除を求めた。

だが既に先週、西沙群島周辺での同じ軍事演習の様子が明らかにされていた可能性が高い。ツイッターのあるユーザーが、J15が遼寧に着艦する様子を反対側から撮影した動画と写真をシェアしていたのだ。

問題の動画(現在は非公開)は、マーと同じ頃に撮影されたものとみられる。投稿者は、遼寧を監視していた米海軍の艦船の乗組員を名乗っている。本記事の執筆時点でこの投稿者のツイートは非公開のままであり、本誌としてアカウント保有者の身元を確認することはできなかった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ECB総裁、欧州経済統合「緊急性高まる」 早期行動

ビジネス

英小売売上高、10月は前月比-0.7% 予算案発表

ワールド

中国、日本人の短期ビザ免除を再開 林官房長官「交流

ビジネス

独GDP改定値、第3四半期は前期比+0.1% 速報
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中