バイデン大統領も排外主義者? 難民受け入れは、なんとトランプ時代と同数
テキサス州にある同伴者のいない未成年者の移民収容施設(3月30日) DARIO LOPEZ-MILLSーPOOLーREUTERS
<トランプ時代の排外主義を批判していたはずのバイデン大統領だが、難民受け入れ数の上限をトランプ時代の1万5000人に据え置くと発表した>
バイデン米大統領は4月16日、これまでで最も劇的な政策転換を行った。2021会計年度(20年10月~21年9月)の難民受け入れ数の上限を1万5000人に据え置くと発表したのだ。
1万5000人という数字は、トランプ前政権が強硬な反移民政策の一環として設定したもので、40年前に現行の難民受け入れプログラムが導入されて以降で最小だ。
バイデンは大統領選の最中、トランプの難民政策を「冷酷で近視眼的」と非難。年間の上限を12万5000人に引き上げると同時に、「毎年少なくとも9万5000人の最低受け入れ枠を作る」と約束していた。
国務省は2月上旬、今年の上限を6万2500人に引き上げる方針を議会に通知した。バイデンは来年には12万5000人に増やす予定だと語り、難民受け入れプログラムを再建・拡充するための大統領令を発表した。
それ以来、NGOや議会の支持者は大統領が6万2500人という数字を正式決定する日を心待ちにしていた。だが16日の発表は、トランプ時代と同じ。支持者の多くから批判が殺到すると、ホワイトハウスは「最終的な」上限は5月15日に決まると微修正したが、サキ大統領報道官は当初目標の6万2500人には届かないだろうと言った。
トランプが難民受け入れシステムをめちゃくちゃにしたせいで、目標の達成が不可能になった──というのが政府の表向きの説明だ。ある当局者はロイター通信に対し、「予想以上にひどい状態で、約束した数字を実現するためには、大規模なシステムの修復が必要だ」と語った。
ニューヨーク・タイムズの取材に応じた当局者は、「同伴者のいない未成年者による国境越えが急増したため、難民担当部局の対応能力が既に限界に達したとの懸念が生じた」と言った。だが同紙によれば、移民と難民は全く別のシステムで処理されているので、この説明はおかしい。
6万2500人の目標が今年は物理的に達成困難になったとしても、トランプ時代の数字に少しでも上乗せして発表できない理由にはならないと、NGO国際難民支援会のエリック・シュワーツ会長は指摘する。「(バイデンは)6万2500人の公約を達成しなくても、前政権より増やすことはできるはず。明らかに政治判断に基づく決定であり、本当に残念だ」