最新記事

日本社会

女子の理系学力を「ムダ」にしている日本社会

2021年4月21日(水)11時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

日本は女子の理系能力の活用度が低い、逆に言えば浪費度が大きい社会だ。いかにももったいなく、「日本は世界的にみても女子生徒の数学の成績がとても良い。親や先生は、ぜひ彼女たちの進路を応援してほしい」という声もある(横山広美・東大教授、「知的な女性を否定する人ほど、『数学は男性的』のバイアス」朝日新聞デジタル、2021年4月10日)。

日本の女子は数学の成績は良いが、理系職を志望する子は少ない。こういう現実はデータで可視化できる。<図1>は、やや古いが「PISA 2006」のデータから作成したグラフだ。ご覧のように、日本の女子生徒の数学学力はトップレベルだが、理系職の志望率は調査対象国の中で最も低くなっている。

data210421-chart02.png

よく言われるように、日本では「女子が理系なんて」という思い込み(偏見)が強い。イスラム圏のように、試験の成績で専攻が機械的に割り振られるようにしたら、今よりもリケジョはかなり増えるだろう。だが当人の意向を無視することは現実的ではない。

やはり内発的な動機を高めないといけないが、なすべきは進路選択を控えた女子生徒に、リケジョの役割モデルを見せることだ。一番の策は中高の理系教員の女性比率を高めることだが、日本は明らかにこの部分が弱い。中学校の理科担当教員の女性比率は、欧米諸国では半分を越えているが、日本は24%しかない(OECD「TALIS 2013」)。教員全体の女性比が違うこともあるが、人為的な是正が必要なレベルだ。教員採用試験でアファーマティブ・アクション(積極的是正措置)を取ってもいいのではないか。

<資料:OECD「Education at a Glance 2019」
    OECD「PISA 2018」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中