最新記事

韓国

文在寅政権・与党関係者の相次ぐ不正行為に不満が鬱積......ソウルと釜山の市長選惨敗の背景

2021年4月20日(火)15時00分
佐々木和義

さらに、曺元長官の後を継いだ秋愛美(チェ・エミ)前法相は、前任長官の疑惑解明を指揮した尹錫悦(ユン・ソギョル)検事総長の側近の検察幹部32人を異動させる「大虐殺人事」を断行、尹総長の職務を停止した。
その秋愛美法相も息子が徴兵で難関とされている部隊に入隊し、不正に休暇を取るなど優遇を受けた疑惑が浮上した。

30代から40代は、住宅価格の高騰に対する不満が強い。文政権は発足以来、20回以上、不動産政策を発令したが、不動産価格がさらに高騰し、マイホームの夢が遠のいたのだ。

そんななか、LH投機が発覚した。韓国住宅供給公社(LH)の職員らが内部情報を不正に利用し、土地開発に伴う補償金を取得し、或いは転売して利益を得る目的で、首都圏の京畿道光明市や始興市などの新都市建設予定地の農地などを購入していたことが発覚した。

新市長の市政が来年の大統領選に少なからぬ影響を及ぼす

2020年12月、野党「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)代表がソウル市長選への出馬を宣言し、翌21年1月、朴映宣前中小ベンチャー企業部長官と呉世勲元ソウル市長が市長選への出馬を宣言した。

事実上、更迭されて辞任した尹錫悦検事総長が次期大統領候補として人気を博すなど保守党に追い風が吹くなか、保守票が割れることを懸念した国民の党は安哲秀代表が出馬を辞退して、ソウル市長の経験がある呉世勲候補に一本化した。

市長選は終始、保守優位だった。朴映宣候補は呉候補の市長時代の政策を批判したが、朴候補は反日煽動を展開した一方、夫名義で東京・赤坂にマンションを保有し、レクサスを所有しているなど、ダブルスタンダードという批判を浴びた。

選挙管理委員会に対する批判もあった。選管が呉世勲候補の配偶者の納税額が事実と異なると公告して、野党側が、選管が呉候補の落選運動を行ったと批判した。

また、ソウル市瑞草区のあるマンションで「今回(イボン)、必ず投票しようという」と呼び掛けがあった。韓国の選挙では候補者に番号が付されており、「今回」と呉世勲候補に付されたの「2番」はいずれも「イボン」と発音することから、呉世勲候補への投票を呼び掛けたと与党関係者が通報して警察が捜査に乗りだす一幕もあった。

ソウル市議会は110議席中102議席を共に民主党が占めており、新市長の前途は多難だが、新市長の市政が来年の大統領選に少なからぬ影響を与えること否めないだろう。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中