サンフランシスコからの転出、昨年全米最多──テック企業大脱走か
San Francisco, Amid Big Tech's Battles With City, Lost More Residents Than Anywhere Else in US
サンフランシスコにはテック企業の本社が多い。写真はツイッター本社(2014年) Robert Galbraith-REUTERS
<コロナ禍の昨年、サンフランシスコから大量流出したのは主としてテック企業で働く高所得の労働者だった。貧富の格差でも全米有数のこの街はどうなる?>
2020年には、アメリカのほぼすべての大都市圏で、住民の大量流出が起きた。そのなかでも、いちばん人口流出が大きかったのが、生活費の高さで悪名高いサンフランシスコだったことが、新たな調査で明らかになった。
アメリカでもっとも生活費のかかる都市であるサンフランシスコでは、別の街へ転居した住民の数が2019年と比べて2倍以上に増え、転出者数は1000人あたり約18人にのぼった。このデータは、事業用不動産サービスを手がけるCBREグループが、米郵政公社(USPS)の転居データをもとに算出したものだ。
転出した住民の大部分は若くて裕福な労働者だったと、CBREの調査ディレクターを務めるエリック・ウィレットは本誌に述べた。空き室がもっとも多くなったのは高所得者向けの賃貸物件で、おかげで家賃は全体的に低下した。
「テック系の労働者が(サンフランシスコの)経済の一大勢力であることを考えれば、彼らが転出者のかなりの部分を占めていると推測できる」とウィレットは言う。「ただし、データを検証すると、ベイエリアから転出した住民の圧倒的大多数は、近隣地区に引っ越している。サンフランシスコを離れた人のうち、カリフォルニア州も離れた人はごくわずかだ」
調査レポートによると、湾の対岸の安い住居費と広いスペースの魅力に加えて、リモートワークの拡大が、これほど多くのサンフランシスコ住民の転居を誘う要因になったとされている。
CBREテック・インサイト・センターのエグゼクティブ・ディレクターを務めるコリン・ヤスコチが本誌に語ったところによれば、とりわけサンフランシスコでは、パンデミックの渦中に在宅勤務をするだけの十分なスペースが自宅にないと気づいた人が多かったという。さらに、人々を都市に引き寄せていたさまざまな施設が閉鎖されたことで、住民がとどまる理由もほとんどなくなった。
企業の6割がオフィスを縮小
CBREのレポートによれば、ミレニアル世代は、パンデミック以前でも徐々にサンフランシスコ離れをしていたという。テック系巨大企業が、別の都市圏に照準を合わせ始めたためだ。非営利団体「sf.citi」のデータによれば、サンフランシスコを拠点とする企業の63%が、パンデミック中に物理的なオフィスの規模を縮小した結果、延べにして1580万平方フィート(約147万平方メートル)のスペースが生まれた。
その結果、空きスペースは20%近く増加した。また、83人の創業者やCEOを対象としたsf.citiの調査では、調査対象者の4分の1以上が、従業員の30%ほどは今後もリモート勤務を続ける予定だと回答した。エアビーアンドビー、ペイパル、セールスフォース、ツイッターなど10社を超える大企業は、在宅勤務をきかっけに、オフィスの規模縮小か移転のいずれかに踏み切っている。