内戦前夜、ミャンマーの緊張緩和に乗り出した中国
China Steps Up Efforts to Cool Down Myanmar Tensions Amid Fear of Civil War
だが民主化に移行した後も、国軍は政治的影響力を持ち続けた。昨年11月の選挙ではスーチーのNLDが圧勝したが、軍のエリートたちはこの選挙に不正があったと主張。最終的に今年2月、力づくで政権を奪取し、10年におよぶ民主主義体制の時代を終わらせた。
中国は軍部批判に加わらず、代わりに関係者全員に冷静さを求めてきた。中国政府は、国軍およびスーチー政権の両方と緊密な関係を築き、さらにミャンマーとインドの国境付近で活動する武装勢力とも、一定の関係を維持していた。
その後中国政府はミャンマー国内での影響力をテコにして、すでに死者数百人に及び、急拡大する紛争を抑制しようとしてきた。これまでの死者の大半が、秩序回復をめざすミャンマーの治安部隊の攻撃によるものだったことが報じられている。
「ミャンマーの人々が団結して軍部に抵抗し、政情の安定に向けて民主的な政府による行動を求め、また増加し続ける経済、健康、人道的危機への対処を求めていることは認識している」と、米国務省の報道官は9日、記者団に語った。
一帯一路の重要地点
ミャンマー国軍による政権奪取をアメリカはクーデターと呼んでおり、中国に行動を起こすよう求めてきた。米国務省のネッド・プライス報道官は3月31日に記者団に対して、アメリカ政府は「中国政府が自国の影響力を使い、軍事クーデターを起こした者の責任を問う」ことを求めていると語った。
「ミャンマーで国軍が行ったことは、アメリカの利益にならない。パートナーや同盟国の利益にもならないし、中国政府の利益にもならない」と、当時プライスは述べた。
その翌日、プライスは米中の関係は様々な軋轢によって悩ましい状態になっているものの、「ミャンマーやその他の地域的課題に関しては」アメリカと中国の利益を「ある程度調整」することに言及した。
中国にとっての利益は、ミャンマーが中国の習近平(シー・ チンピン)国家主席が世界に張り巡らせる「一帯一路」構想の中心的役目を果たす立場にあることと結びついている。両国を結ぶ主要な輸送ルートと石油・ガスパイプラインは一帯一路の一環であり、「中国・ミャンマー経済回廊」と呼ばれている。
中国政府は、ミャンマーの激しい混乱に対応するなかで、ミャンマーの関係当局に対し、ミャンマー滞在中の中国国民と中国の利益を守るよう繰り返し要請してきた。だがそのための猶予もなく、ミャンマーの国内勢力は連帯して国軍と対峙し、内戦前夜の様相を呈してきた。