ウイグル人権問題、中国に牛耳られる国連
昨年4月19日のコラム<トランプ「WHO拠出金停止」、習近平「高笑い」――アフターコロナの世界新秩序を狙う中国>に書いたように、国連のほとんどの専門機関や関連機関を中国が牛耳っている。中国が国際社会における発言権を強化するということは即ち、このたびのミャンマー軍クーデターのような残虐な殺戮行為に軍が出て、多くの無辜の民の命を軍が武器で容赦なく奪っていっても、「国連としては何もできないという状況に追い込まれる」ということを意味する。
ミャンマーではこれまで600人以上の抗議デモ参加者が軍によって殺害されているというのに、4月10日にはさらに80名以上の人が銃撃により死亡しているという。これを止める力が国連にないという恐るべき現実が人類を支配しているなどということがあっていいのだろうか?
ミャンマーの惨状は、「国連」が中国などの独裁国家によって牛耳られていて「動けない」という現実を、否応なしに私たちに突き付けている。
民主主義国家の価値観に基づく横のつながりが不可欠――日本で声を上げた「超党派議連」
だからこそ必要なのは価値観を共にする民主主義国家の横のつながりだ。
4月6日、「人権侵害に関与した外国の当局者へ制裁を科す議員立法制定を検討する超党派の議員連盟」が、国会内で設立総会を開いた。人権侵害に関与した人物や団体に対する制裁を可能とする「人権侵害制裁法」の今国会での制定を目指している。中心となって動いてきたのは中谷元・元防衛相だ。
中谷氏は早くから中国の人権侵害に関し「批判や抗議だけでは改まらない」と指摘していた。人権侵害に対し制裁を科す法律は海外で「マグニツキー法」と呼ばれ、アメリカやカナダ、イギリスおよびEUはこうした制度を整えてきたが、中谷氏は「G7(先進7カ国)で人権侵害のみを理由に制裁する法律がないのは日本だけだ」とも指摘していた。
中谷氏の指摘はアメリカでも広く報道され、私自身取材を受けて分析を求められた。アメリカでは中谷氏が主張しておられる「日本だけ逃げていると思われないよう、口先だけでなく行動できる形をとるのが必要だ」という姿勢を高く評価している。中谷氏が主導してきた超党派議員連盟の動きは日本にとって不可欠だ。
今や「国連は独裁国家に牛耳られているので、国連の外で民主主義国家の価値観による連合」がなくてはならない状況に世界は今追い込まれているからである。
中国というモンスターを生んだのは日本
中国によって国連が牛耳られるようになったのは、日本が1989年の天安門事件後の対中経済封鎖で「中国を孤立させてはならない」などとして、中国を支援してきたからだ。何度も同じ図を出して大変申し訳なく思うが、もう一度中国商務部のデータから作成したグラフを以下に示したい。