最新記事

中国

ウイグル人権問題、中国に牛耳られる国連

2021年4月11日(日)18時53分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

昨年4月19日のコラム<トランプ「WHO拠出金停止」、習近平「高笑い」――アフターコロナの世界新秩序を狙う中国>に書いたように、国連のほとんどの専門機関や関連機関を中国が牛耳っている。中国が国際社会における発言権を強化するということは即ち、このたびのミャンマー軍クーデターのような残虐な殺戮行為に軍が出て、多くの無辜の民の命を軍が武器で容赦なく奪っていっても、「国連としては何もできないという状況に追い込まれる」ということを意味する。

ミャンマーではこれまで600人以上の抗議デモ参加者が軍によって殺害されているというのに、4月10日にはさらに80名以上の人が銃撃により死亡しているという。これを止める力が国連にないという恐るべき現実が人類を支配しているなどということがあっていいのだろうか?

ミャンマーの惨状は、「国連」が中国などの独裁国家によって牛耳られていて「動けない」という現実を、否応なしに私たちに突き付けている。

民主主義国家の価値観に基づく横のつながりが不可欠――日本で声を上げた「超党派議連」


だからこそ必要なのは価値観を共にする民主主義国家の横のつながりだ。

4月6日、「人権侵害に関与した外国の当局者へ制裁を科す議員立法制定を検討する超党派の議員連盟」が、国会内で設立総会を開いた。人権侵害に関与した人物や団体に対する制裁を可能とする「人権侵害制裁法」の今国会での制定を目指している。中心となって動いてきたのは中谷元・元防衛相だ。

中谷氏は早くから中国の人権侵害に関し「批判や抗議だけでは改まらない」と指摘していた。人権侵害に対し制裁を科す法律は海外で「マグニツキー法」と呼ばれ、アメリカやカナダ、イギリスおよびEUはこうした制度を整えてきたが、中谷氏は「G7(先進7カ国)で人権侵害のみを理由に制裁する法律がないのは日本だけだ」とも指摘していた。

中谷氏の指摘はアメリカでも広く報道され、私自身取材を受けて分析を求められた。アメリカでは中谷氏が主張しておられる「日本だけ逃げていると思われないよう、口先だけでなく行動できる形をとるのが必要だ」という姿勢を高く評価している。中谷氏が主導してきた超党派議員連盟の動きは日本にとって不可欠だ。

今や「国連は独裁国家に牛耳られているので、国連の外で民主主義国家の価値観による連合」がなくてはならない状況に世界は今追い込まれているからである。

中国というモンスターを生んだのは日本

中国によって国連が牛耳られるようになったのは、日本が1989年の天安門事件後の対中経済封鎖で「中国を孤立させてはならない」などとして、中国を支援してきたからだ。何度も同じ図を出して大変申し訳なく思うが、もう一度中国商務部のデータから作成したグラフを以下に示したい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国との建設的な対話に全面的にコミット=ゼレンスキ

ワールド

米、ロシアが和平合意ならエネルギー部門への制裁緩和

ワールド

トランプ米政権、コロンビア大への助成金を中止 反ユ

ワールド

ミャンマー軍事政権、2025年12月―26年1月に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題に...「まさに庶民のマーサ・スチュアート!」
  • 3
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMARS攻撃で訓練中の兵士を「一掃」する衝撃映像を公開
  • 4
    同盟国にも牙を剥くトランプ大統領が日本には甘い4つ…
  • 5
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 6
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 7
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望…
  • 10
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 8
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 9
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中