【ミャンマー現地ルポ】デモ取締りの警察官に警棒で殴られ拘束されて
Bloody Street Tales
デモ隊弾圧で当局に銃撃された男性を運ぶ人々(3月14日、マンダレー) REUTERS
<市民を脅迫、宅配を強盗、子供も射殺──ミャンマー警察に警棒で殴られ、拘束された日本人ジャーナリストが身をもって知ったデモ弾圧の現状と抵抗運動の針路>
逃げられない――。重装備の警察隊の挟み撃ちに遭い、そう思って手を上げた私の体を4~5人の警察官が押さえ付け、腕を後ろ手にねじり上げた。ヘルメットや防弾チョッキの上から、ガツンガツンという重い衝撃を受けた。目撃者によると、警棒で殴られていたらしい。そして警察官らは私を護送車まで引っ張っていき、尻を蹴って中に押し込んだ。
2月26日午前、ミャンマー(ビルマ)最大都市ヤンゴンのミニゴン交差点付近で、国軍によるクーデターに反対するデモを取材していた時のことだ。当初は数千人のデモ隊が、歌を歌ったり、掛け声を掛けたりして、平和的に抗議していた。しばらくすると当局の鎮圧が始まり、そのなかで私は拘束されたのだった。
しかし、この程度の暴行は、その後ミャンマー各地で警察や兵士によって行われた数々の残虐行為に比べれば、ごく軽いものだった。市民団体、政治犯支援協会(AAPP)の3月26日までの集計では、少なくとも328人が当局の銃撃などで命を落とし、3000人超が拘束されたり罪に問われたりしているのだ。
約40人の記者が拘束されたほか、地元メディアが次々と家宅捜索を受けるなど、メディア弾圧も強まっている。外国人である私は半日で解放されたが、翌日の取材中に捕まった友人のミャンマー人女性記者はまだ釈放されていない。
2月下旬から実力行使に出た当局は弾圧をエスカレートさせ、3月3日にはヤンゴン北オッカラ地区でデモ隊に向かってマシンガンを掃射、その結果数十人が死亡した。現地でデモ参加者をかくまった住民は「胸に銃を突き付けられた状態でゴム弾を撃たれた」と証言している。また、14日にはラインタヤ地区で掃討作戦を行い、少なくとも38人が死亡したとされる。
警察官らが市民を恐喝
当局の攻撃の対象は、デモ隊だけでなく、市民全体に広がっている。ヤンゴン西のサンチャウン地区などでは、警察と兵士の混成部隊が、街を取り囲んでデモ隊を逃げられないようにした上で家宅捜索を行い、多数のデモ隊や住民を拘束していった。
国軍側がデモ参加者だけでなく住民を敵視しているのは、住民の多くがクーデターに反対していることに加え、抗議活動でデモ隊と住民が連携していることが原因だろう。住民は道路に土のうやドラム缶でバリケードを築き、見張りを立てて、当局の部隊が近づいてきたら携帯アプリなどでデモ隊に知らせる。そしてデモ隊を自分の部屋にかくまう。
このため、国軍側は住民全体を脅迫し、恐怖によって抵抗の意思を奪う作戦に出ている。例えば私が自宅近くで目にしたのは、強制的に連行された住民たちが、自ら築いたバリケードを撤去させられている姿だった。