【ミャンマー現地ルポ】デモ取締りの警察官に警棒で殴られ拘束されて
Bloody Street Tales
付近住民によると国軍側は「来なければ殺す」などと脅して30人ほどを徴用、土のうなどの撤去作業に当たらせた。そして夜間には警察車両が巡回し、「もう一度バリケードを作れば、地域住民の全員に対して法的措置を取る」などと拡声器で住民を脅すのだ。3月中旬以降、こうしてヤンゴンの多くの地区でバリケードが撤去され、デモができる場所は少なくなっている。
警察官や兵士の素行が悪いことも、住民に恐怖を与えている。自転車で食事を届ける宅配業者のスタッフを、彼らが恐喝して、食べ物や金を奪う事件が頻発している。また、デモ隊が利用する喫茶店などを当局が襲撃するケースもある。当局がブルドーザーで駐車中の数十台の乗用車を破壊したこともあった。
中部マンダレーでは23日、家宅捜索を行った当局によって、父親に抱かれた7歳の女児が銃撃されて殺される事件が起きている。こうした兵士や警察官の蛮行が取り締まられることはなく、むしろ国軍側は兵士らの略奪や暴行を利用して、住民を恐怖のどん底に陥れようとしているようだ。
クーデター以降、抗議活動を行うミャンマーの市民は驚異的な忍耐強さを見せてきた。デモ隊は武器と言えるほどの武器は持たず、金属製や木製の盾を用意したり、水風船を投げて兵士に嫌がらせをしたりする程度だった。それは、拘束中のアウンサンスーチー国家顧問の信念でもある、非暴力の抵抗という国民的コンセンサスがあったからだ。
対軍「連邦軍」の構想も
しかし当局の弾圧が厳しさを増し、国際社会の動きも遅いというなかで、3月中旬頃から、手製の火炎瓶や発煙筒、スリングショットなどを用いるデモ隊が出てきた。住民の中にも、「警察が家にやって来たときのため」として、包丁などを武器に用意する人も出てきた。14日には、昨年の総選挙で当選した議員らが国軍に対抗して組織した連邦議会代表委員会(CRPH)が、「住民には自己防衛権がある」として、命や財産を守る行動は罪にならないと宣言した。デモ隊はこれを、「ある程度の武器使用は許される」と受け取った。
追い詰められた市民は、今後の抗議活動の方向性に悩み、現在議論を重ねているところだ。外国人である私に意見を求める若者は多い。「もし武力闘争に出たとしたら、国際社会はどう思うか」と。
そして彼らが最後に決まって吐露するのは、「このまま平和的に抗議をしても、捕まって、殺されるだけではないか」という思いだ。当初デモ隊には「非暴力の抗議であれば、国軍もそう乱暴なことはできない」という認識があった。しかし平和的なデモに対してマシンガンまでもが使われる事態になり、非暴力路線の限界を感じてきているのだ。