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親の働く姿を見ていないために、職業へのイメージを持てない日本の子どもたち

2021年3月31日(水)15時30分
舞田敏彦(教育社会学者)
在宅勤務の父親とこども

リモートワークの普及で、子どもが親の働く姿を目にする機会が増えている kohei_hara/iStock.

<日本では、父親の職業を知らない生徒、将来の志望職が明確でない生徒が他国と比較して多い>

昨年12月の第一生命の調査によると、小学生男子の志望職1位は「会社員」となっている。例年はユーチューバー、スポーツ選手、プロゲーマーなどが挙がるのだが、会社員という現実的な回答が首位にくるのは珍しい。

コロナ禍で在宅勤務が増え、親が働く姿を目の当たりにすることが多くなったためだろう。「百聞は一見に如かず」というが、子どもは特にそうだ。職住一致(近接)は、子どもの職業観の形成に寄与する「隠れたカリキュラム」と言ってよい。日本も戦後初期の頃まではこれが機能していて、働く親の姿を目にしつつ、子どもは早いうちから将来のイメージを持てていた。

だが雇用労働化が進み、労働者が自宅から離れたオフィスに通勤するようになるとそうは行かない。今の日本が「職住分離」の社会であることは、データではっきりと分かる。<図1>は、2015年の『国勢調査』から作成したグラフだ。

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父親年代の雇用労働者がどこで働いているかだが、自宅という人はわずかしかいない。東京では8割近くが、住んでいる市区町村の外で仕事をしている。当然、通勤時間も長くなりがちだ。子どもが目にするのは、深夜や休日、疲れてゴロ寝している親の姿だけというのもザラだろう。

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