「中露朝韓」急接近!──ラブロフ外相訪中「モスクワ便り」
共産党という組織に守られている中国共産党のリーダーたちもこの点では公開討論にも慣れていないし、こんな提案はできないかと思います。
ロシアから見ると、2014年のクリミア併合以来、ずっと欧州と米国の理不尽な振舞に怒りまくり、耐えてきたところに、中国という同志が現れたことは朗報だろうと思います。
ラブロフ外相訪韓と中朝首脳親書交換
習近平にはロシアとの関係を徹底的に強化して、対米戦略を練っていくという狙いがあることは確かだ。
その証拠に3月23日の夕方、ラブロフは韓国を訪問した。
24日に行われる韓露国交樹立30周年を記念する「2020-2021韓露交流の年」開幕式に出席するためという口実はあっても、中国が韓国を中露側に引き寄せるための行動であることは明らかだ。力関係から言って、習近平がプーチンに頼み、プーチンがラブロフに訪韓させたと見るのが正しいだろう。
というのは、「モスクワの友人」によれば、ロシアにおけるラブロフの訪中は、そんなに大きく扱われてはおらず、訪韓に関してはほとんど報道されていないとのこと。それに比べて中国におけるラブロフの行動に関する報道の扱いは尋常ではなく大きく熱が入っている。訪韓のニュースも、私自身、実は中国の報道で知った。
ラブロフの韓国入りと時間を合わせて、3月23日には、習近平は北朝鮮の金正恩と口頭親書を交換している。習近平は金正恩に「両国人民に立派な生活を与える用意がある」と北に対する経済的支援を示唆し、金正恩は習近平に「敵対勢力の挑戦に対して両国の協力を強化したい」と「仲間」としてのエールを送っている。
これは即ち、先ずは中露朝で蜜月関係を強化し、朝鮮半島で韓国だけが孤立している危険さを韓国に身に染みて実感してもらい、一人韓国だけがアメリカ側に付いているのは安全保障上も危ないと思わせるのが狙いだろう。
北朝鮮のミサイル発射
中国は北朝鮮がミサイルや核実験などで暴走するのを嫌っているが、無難な「通常の軍事訓練的な範囲内」のミサイル発射ならば、このタイミングでやってくれるのは、大いに歓迎だろう。
日本では専ら、「バイデン政権の出方を見極めてから、どうするかを北は決めているのだ」といった傾向の分析が多いが、背後にいる中国の動きを見逃さない方がいい。
文在寅の「右を見たり、左を見たり」という風見鶏外交はみっともないが、日本は北を非難したり「アメリカとともになら、中国を名指しで批判する」という段階までようやく来てはいるものの、習近平の国賓来日をまだ「中止する」とは言えないお方が政府与党にはおられる。
菅政権も「そのお方」が背後にいての政権のようなので、「右を見たり、左を見たり」外交は基軸にあるように思われてならない。
情けないではないか。
いや、情けないだけでなく、これはもう「危険な領域にある」と危惧するのである。
※本コラムは中国問題グローバル研究所のウェブサイトからの転載です。
[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社、3月22日出版予定)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。