持ち家 vs 賃貸? いいとこ取りの第3の選択が、コロナ禍のNYで脚光
しかし交際相手と同居することになり、寝室と小さなキッチンという狭さに二人の不満が爆発した。風呂では排水が逆流し、ネズミが出るなど、環境の悪さにも辟易していたようだ。
とはいえ、テキサスに購入した自宅のローンが残っているため、ニューヨークで新たな物件を買うことは難しい。そんなキンブロ氏を救ったのがRent-to-Ownだ。
幸運にも、住み慣れたローワー・イーストサイド地区の一角に、小綺麗な築浅マンションを見つけることができた。元モデルルームのため家具付きという好条件だ。広さは同程度だが、竹林に囲まれた瀟洒な専用庭があり、ロックダウン中もストレスなく外気に当たることができる。二人はすぐに移住を決めた。
家賃は約65万円となり、以前の物件の倍ほどかかっている。しかし、1年間の賃貸期間後に購入を決めた場合は、すでに払った家賃の50〜75%を頭金に繰り入れることができる。実質的に同程度の家賃でかなり良い物件に移住できた計算だ。
キンブロ氏は慎重で、子供が生まれると手狭になることから、購入するかは未定だという。購入を見送る場合には家賃の一部返金などは得られない。とはいえ、1年後の家族構成に応じて後で決断できるのもまた、大きなメリットの一つだ。
家主目線でも合理的
非常に柔軟なRent-to-Ownだが、一方で家主側から見た場合は妥当な契約なのだろうか。率直なところ、通常の売買契約よりはやや不利だと見ることもできる。賃貸期間後に確実に売却できる保証はないため、将来の見通しが立ちづらいためだ。
また、家主としては早期に一括で売却収入を得たいという心理が働くため、従来であればこのように賃貸期間を挟む契約は提案しづらかった。
しかし、コロナを境に状況は急変する。リモートワークの普及とともに、家賃が高く手狭なNYの物件が敬遠され始めたのだ。家主としては売却の可能性を残しながらも、なんとか当座の資金を得たいという状況となった。
そこで希望の光となったのがRent-to-Ownだ。コロナ禍で物件価値が下がっているいま、おそらく高い価格での売却は望めない。空き家にしておくよりはRent-to-Ownで毎月の家賃収入を確保した方が、家主にもメリットがあるのだ。
本方式は目新しいものではなく、旧くは80年代など、金利上昇によって住宅市場が不調となるたびに流行してきた。フォーブス誌は、ニューヨークやマイアミなど、住宅価格が高騰しているエリアに多く見られると説明している。現代のコロナ不況で蘇った、借り手に有利なプランと言えるだろう。