医療崩壊を食い止めた人々がいた──現場が教えるコロナ「第4波」の備え方
THE GOOD “MAKESHIFTS”
「限られた派遣期間で、経験も少ない自分に何ができるのだろうか」。そう思いながら、現場に入った小林は応援看護師として支援に入ることの意味を感じ取った。それまで夜勤は6階ならば看護師が3人で対応していた。ナースステーションを挟んで軽症患者と症状が重い患者のゾーンに分けられていた。夜勤は2対1で分かれて、軽症者全員に看護師1人で対応することになる。
業務負荷がかかるのも当然であり、1人加わり2対2で対応するだけでも負荷はかなり軽減される。徐々にレッドゾーンのエリアが小さくなり、陽性となったり濃厚接触者として勤務できていなかったりしていたスタッフが吉田病院に戻り始めた12月21日、小林は支援を終えた。
すんなりと現場に入れたのは、12月4日から支援活動を始めていたジャパンハートの看護師、宮田理香らの存在も大きかった。宮田は院内クラスターを、国内外の「災害支援」と同等だと語り、これまでも支援に入ってきた。民間の看護師として、レッドゾーン内で働いた経験値は国内トップレベルと言っていい。彼女はそれまでの知見を踏まえて、小林にきちんと防護をすれば感染は防げると伝えていた。宮田もまた、支援の前後でPCR検査を受けているが陽性になったことは一度もない。
2021年2月8日──、宮田は宮古島にいた。新型コロナ流行が続く島内の介護福祉施設で支援活動に当たっていた。どこの現場でも、彼女たちの支援は「郷に入っては郷に従え」を実践するところから始まる。自分たちはあくまで支援者であって、主役でも指導者でもないからだ。
彼女は院内クラスターで問題になるのは、周囲や社会の理解だと言った。レッドゾーンで働くのは危険である、周囲に感染させるかもしれないという漠然とした不安が医療者への差別や偏見を生み、支援や職場復帰を遅らせる。「その原因はですね......」と画面越しの宮田はやや語気を強めた。
「マスコミの報道も大きいと思います。PPEを着用して、適切な感染管理をしてから、レッドゾーンに入って看護をするスタッフは自衛隊や看護協会からの応援看護師にもいます。こうしたスタッフから市中感染が拡大した事例はどの程度あるのでしょうか。リスクがゼロだとは言いません。ですが、可能な限り低く抑える方法は蓄積されています」
1年間、現場に入り込んでいればこそ分かることは増えている。だが、メディアもそこには追い付いていない。派手なトピックや提言、数字にばかり飛び付き、地道な実践は日陰の存在になっていく......。
※ルポ後編はこちら:カギは「災害医療」 今、日本がコロナ医療体制を変える最後のチャンス
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