五輪延期で購入者が訴訟も 選手村利用のマンション晴海フラッグ
買い手側代理人の轟木博信弁護士は、売却済みの物件にもかかわらず、都に貸し出す契約を新たに結んだことについて、売り主の責任を問えるかどうかが争点の一つだと指摘する。売り主が都への貸し出しを延長する義務はないとの主張だ。
売り主10社の幹事役である三井不動産レジデンシャルは、ロイターの取材に対し、売却済みの物件を都に貸し出すことは「契約上、問題ない」と回答。都から受け取る新たな約41億円を補償に充てるつもりはあるかとの質問には、「事業の詳細に関しては回答を差し控える」とした。売り手側の代理人は、轟木弁護士が送った質問状への回答として、新型コロナウイルスによる五輪延期に伴う引き渡しの延期は法律上、補償が必要な場合には該当しないと説明している。
都の関係者によると、都は建物を五輪選手村として使用するという当初の目的に沿って賃貸契約を新たに結んだだけで、売り主と購入者間の売買契約には関与していないという。
イメージ悪化を懸念する声
轟木弁護士は、五輪の開催が21年に延期されても、もともとの入居予定時期である23年3月ごろまでに物件を引き渡すことは可能ではないかというのがもう一つの争点になると話す。引き渡し期日を順守することは不動産契約上の大前提で、売り主側には最大限の努力が求められると、轟木弁護士は言う。
三井不動産レジデンシャルはロイターの取材に対し、住宅として必要な品質を担保するために設定した当初の工期を変更する予定はないと回答した。購入者が説明会の実施を求めていることに関しては、「売り主として個別に丁寧に説明をしている。購入者へ説明の場は継続的に設けている」とした。
轟木弁護士は、適切な補償による解決を期待するものの、売り主が調停に応じない場合、訴訟も視野に入れていると話す。
晴海フラッグの第2期販売は、コロナの感染拡大の影響もあり、昨年3月に延期されたまま今に至っている。敷地内に計画されている小学校の建設も後ずれしている。
調停に参加していない購入者の間からは、対立の長期化によるマンションや購入者全体のイメージ悪化を懸念する声も聞かれる。都内に住む男性(40歳)は、販売前にこのような対立関係が生まれることは望ましくないと考えている。
「契約者も入居後の生活が円滑になるようにしていく必要がある。売り主は、そうした将来を見据えたコミュニケーションの中心に立って、より積極的に対応して欲しい」と、男性は話す。
(新田裕貴、梅川崇 編集:久保信博)
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