最新記事

東京五輪

五輪延期で購入者が訴訟も 選手村利用のマンション晴海フラッグ

2021年3月11日(木)11時47分

買い手側代理人の轟木博信弁護士は、売却済みの物件にもかかわらず、都に貸し出す契約を新たに結んだことについて、売り主の責任を問えるかどうかが争点の一つだと指摘する。売り主が都への貸し出しを延長する義務はないとの主張だ。

売り主10社の幹事役である三井不動産レジデンシャルは、ロイターの取材に対し、売却済みの物件を都に貸し出すことは「契約上、問題ない」と回答。都から受け取る新たな約41億円を補償に充てるつもりはあるかとの質問には、「事業の詳細に関しては回答を差し控える」とした。売り手側の代理人は、轟木弁護士が送った質問状への回答として、新型コロナウイルスによる五輪延期に伴う引き渡しの延期は法律上、補償が必要な場合には該当しないと説明している。

都の関係者によると、都は建物を五輪選手村として使用するという当初の目的に沿って賃貸契約を新たに結んだだけで、売り主と購入者間の売買契約には関与していないという。

イメージ悪化を懸念する声

轟木弁護士は、五輪の開催が21年に延期されても、もともとの入居予定時期である23年3月ごろまでに物件を引き渡すことは可能ではないかというのがもう一つの争点になると話す。引き渡し期日を順守することは不動産契約上の大前提で、売り主側には最大限の努力が求められると、轟木弁護士は言う。

三井不動産レジデンシャルはロイターの取材に対し、住宅として必要な品質を担保するために設定した当初の工期を変更する予定はないと回答した。購入者が説明会の実施を求めていることに関しては、「売り主として個別に丁寧に説明をしている。購入者へ説明の場は継続的に設けている」とした。

轟木弁護士は、適切な補償による解決を期待するものの、売り主が調停に応じない場合、訴訟も視野に入れていると話す。

晴海フラッグの第2期販売は、コロナの感染拡大の影響もあり、昨年3月に延期されたまま今に至っている。敷地内に計画されている小学校の建設も後ずれしている。

調停に参加していない購入者の間からは、対立の長期化によるマンションや購入者全体のイメージ悪化を懸念する声も聞かれる。都内に住む男性(40歳)は、販売前にこのような対立関係が生まれることは望ましくないと考えている。

「契約者も入居後の生活が円滑になるようにしていく必要がある。売り主は、そうした将来を見据えたコミュニケーションの中心に立って、より積極的に対応して欲しい」と、男性は話す。

(新田裕貴、梅川崇 編集:久保信博)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・フィット感で人気の「ウレタンマスク」本当のヤバさ ウイルス専門家の徹底検証で新事実
・新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...
→→→【2021年最新 証券会社ランキング】



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「誰もが気に入る」、波紋広がる「中東のリ

ビジネス

ECB政策金利、いずれ2%に到達する必要=ポルトガ

ビジネス

米24年12月貿易赤字、984億ドルに拡大 輸入額

ビジネス

米ディズニーの24年10─12月期決算、予想上回る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国経済ピークアウト
特集:中国経済ピークアウト
2025年2月11日号(2/ 4発売)

AIやEVは輝き、バブル崩壊と需要減が影を落とす。中国「14億経済」の現在地と未来図を読む

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 2
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギー不足を補う「ある食品」で賢い選択を
  • 3
    教職不人気で加速する「教員の学力低下」の深刻度
  • 4
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    マイクロプラスチックが「脳の血流」を長期間にわた…
  • 7
    【USAID】トランプ=マスクが援助を凍結した国々のリ…
  • 8
    「僕は飛行機を遅らせた...」離陸直前に翼の部品が外…
  • 9
    AIやEVが輝く一方で、バブルや不況の影が広がる.....…
  • 10
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 6
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 7
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 8
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギ…
  • 9
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 10
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中