感染対策の楽観論を砕いたコロナ変異株 免疫仮説の抜本修正必要に
大きな展開があったのは昨年11月だ。米ファイザーとドイツのビオンテックの連合と、米モデルナ がそれぞれ、臨床試験(治験)で約95%の有効性が示されたと発表した。これは今開発されているどのインフルエンザワクチンよりも高い有効性だ。
ロイターが今回取材した少なくとも数人の専門家は、こうしたデータを受けても自分たちは、そうしたワクチンがコロナウイルスを一掃するとは予想しなかったと話した。しかし、多くの専門家は、このデータが出現したことで、研究界では世界が十分なスピードで接種を進めることができさえすれば、実質的な根絶は可能だろうとの希望が持ち上がったと指摘する。
英インペリアル・カレッジ・ロンドンの感染症疫学専門家、アズラ・ガーニ氏は「昨年のクリスマス前の時点では、われわれは皆、こうしたワクチン登場を極めて楽観的に受け止めた」と話した。「コロナワクチン第1世代で、これほど高い有効性のワクチンが可能になるとはわれわれは必ずしも予想していなかった」
「むち打ちを食らったような」見通し変更
しかし楽観論は短命に終わった。12月末には英国が感染力の強い新たな変異株が見つかったと警告。この変異ウイルスは英国内で急速に感染の主流になった。ほぼ同じ頃、研究者は南アとブラジルで、感染力のさらに強い変異株が流行し始めたことを知ることとなった。
ファイザー所属のワクチン専門家、フィル・ドーミツアー氏は昨年11月の時点では、ロイターに対し、同社ワクチンの成功はコロナウイルスが「免疫に対するぜい弱性」を持つことを示していると話し、「人類にとって画期的な出来事」と強調していた。しかし今年1月初めには、同氏は変異株が新たな局面到来の予兆となっていることを認めざるを得なかった。
1月下旬には、ワクチンに及ぼす影響がさらに明らかになってきた。米ノババックスのデータが、英国の治験では89%の有効性を示した半面、南アでの治験ではわずか50%だった。1週間後には、英アストラゼネカ のワクチンが南ア型による軽度の発症に対して限定的な予防効果しかないとするデータも示された。
何人かの専門家は、直近で迫られた見通しの変更はかなりのものだったと話す。米ラホヤ免疫研究所(サンディエゴ)のウイルス学者、シェーン・クロッティー氏は、科学者たちがあまりの衝撃に「むち打ち」を食らったような状況だと描写した。同氏は昨年12月の時点では、コロナウイルスをはしかウイルスのように「機能的に根絶する」ことは可能だと考えていた。
今はどうだろうか。「状況打開のための答えや進むべき道は、できるだけ多くの人に接種することだ。それは今も、12月1日時点や1月1日時点と変わらない」という。しかし、そうした努力から期待できる「成果」はもはや、以前と同じではないと警戒心をあらわにした。
【話題の記事】
・フィット感で人気の「ウレタンマスク」本当のヤバさ ウイルス専門家の徹底検証で新事実
・新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...
→→→【2021年最新 証券会社ランキング】