最新記事

セクハラ

クオモNY州知事がセクハラ、で広がる衝撃

2021年3月5日(金)18時00分
猿渡由紀

「今すぐ、辞任を!」とのメッセージが...... REUTERS/Mike Segar

<新型コロナ感染対策で、人気と尊敬を集めたニューヨーク・クオモ州知事が、複数の女性にセクハラをしていたことが発覚し、衝撃が広がっている......>

著名人のセクハラが、またアメリカを騒がせている。2017年秋に大物映画プロデューサー、ハーベイ・ワインスタインのセクハラが暴露されて以来、数えきれないほどの有力者の名前が浮上し、いい加減この手のニュースには慣れてきたが、今度の件は特に衝撃が広がっている。加害者がニューヨーク州知事アンドリュー・クオモ(63)で、セクハラ行為がなされたのがつい最近だったからだ。

今からちょうど1年前に、ニューヨークが新型コロナ感染者を急増させてから、クオモ州知事は、決断力と行動力で、人々の尊敬を集めてきた。毎日行われたクオモのブリーフィングを見て、「大統領になるべき」という反応もあった。

3月から閉鎖を強いられてきた映画館チェーンのオーナーらが、「そろそろ開けさせてくれ」と、クオモを名指しして強烈なプレッシャーをかけてきても揺らがない。目先のことにまどわされず、どれだけ文句を言われても正しいことを貫く。クオモは、そんなリーダーだった......。

しかし、その同じ頃に、彼は若い女性にセクハラをしていたことが明らかになったのである。

女性3人が次々に告発した

先月末、クオモからセクハラを受けたと名乗り出たシャーロット・ベネット(25)は、彼のもとで働いていた昨年6月5日、職場でふたりきりになった時、クオモから個人的なことを聞かれ、「恋愛で年齢差は気になるか」「自分は20代の女性と関係をもつことにオープンだ」などと言われたと明かしている。「私と寝たがっているというのが伝わってきて、私はとても怖い気持ちになりました」と、彼女は「ニューヨーク・タイムズ」に語った。

ベネットの告発から数日後には、やはりクオモのもとで働いていた別の女性が自分の体験をウェブサイトに投稿。リンジー・ボイランというその女性によると、2016年から2018年の間に、クオモから体を触れたり、無理やり唇にキスをされそうになったりすることがあった。公務でプライベートジェットに同乗した時に、「ストリップポーカー(脱衣を含む宴会ゲーム)をやろう」と誘われたとも述べている。

その後、さらにもうひとりの女性が名乗り出た。今度の女性アナ・ルッチ(33)はクオモの職場の人間ではなく、2019年9月に行われたルッチの友人の結婚式で出会った関係。クオモが新郎新婦に乾杯をしてくれたことに対してルッチがお礼を言うと、クオモは、背中の開いたドレスを着ているルックの腰を触ったという。ルックがその手を払い除けると、今度は両手でルッチの頬を触り、「キスしていいか」と聞いてきた。ルッチはその証拠写真を「ニューヨーク・タイムズ」に提供している。


被害者の女性たちへの誠意のない発言

ベネットが被害に遭ったのは、クオモのブリーフィングが評判になっていた頃だ。コロナ対策で「100日間、ほとんど寝ていない」と言っていたクオモだが、セクハラをする余裕はあったということである。何より呆れるのは、「#MeToo」運動が起こってからもう3年以上が経つのに、クオモが何も学んでいなかったとわかったことだ。これが、20年も前の出来事を持ち出されたというのなら、あの頃の自分は無知でした、今の自分は違いますと、言い訳ができなくもないだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

貿易分断で世界成長抑制とインフレ高進の恐れ=シュナ

ビジネス

テスラの中国生産車、3月販売は前年比11.5%減 

ビジネス

訂正(発表者側の申し出)-ユニクロ、3月国内既存店

ワールド

ロシア、石油輸出施設の操業制限 ウクライナの攻撃で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中