新型コロナのワクチンをお尻に打ってはダメなのか?
Why the Arm?
お尻に打っても効果は変わらないが作業効率に問題がありそうだ PHOTO ILLUSTRATION BY SLATE. IMAGES BY APPLE AND DIY13/ISTOCKーGETTY IMAGES PLUSーSLATE
<実はお尻でも全く構わないのだが、みんなが肩に打つのにはそれなりの理由がある>
新型コロナウイルスのワクチンは、肩ではなくお尻に打ってほしい――そう思った場合、引き受けてくれる医療のプロが見つかれば、お尻に打ってもいいのだろうか。
結論から言えば、答えはイエス。お尻に打ってもワクチンの効果はある。ただしこの要求はたいていの場合、迷惑な行為と思われかねない。
米疾病対策センター(CDC)の首席医務官を務めたロバート・アムラーは、ファイザー製やモデルナ製など現在入手可能なワクチンはどれも「筋肉注射」だと説明する。つまりワクチンを吸収できる筋肉組織がある場所なら、どこに打っても「そこから成分が血流に乗って全身に行き渡る」ため、効果はある。
お尻の臀筋(でんきん)は肩関節を覆う三角筋と同じく、免疫反応を起こすのに十分な大きさがある。太ももの大腿筋(だいたい)も同じだ。
では、なぜコロナワクチンの注射は肩とされているのか。それはワクチンを打つ側がやりやすいからだと、アムラーは言う。「多くの人は、袖をまくったりシャツのボタンをいくつか外したりするぐらいなら、人前でも気にしない」。だから、公共の場でのワクチン接種には都合がいい。
フィラデルフィア医師会のワクチン情報サイトを管理しているレネ・ナジェラ医師は、脂肪の量も理由の1つだと言う。大半の人は肩や太ももより、お尻のほうが皮下脂肪が厚い。脂肪が厚い部分には長めの注射針が必要になる。
アスリートは「お尻派」
つまりお尻への注射を頼めば、注射をする医療関係者に余計な手間をかけることになり、順番を待つ人たちを余計に待たせることになるのだ。
しかし肩に打ちたくても、ワクチンを吸収するのに十分な三角筋がない人もいるだろうし、義手の人もいるだろう。そういう人は太ももかお尻に打ってもらうのがいいと、アムラーは言う。