米欧の研究で分かった、ポピュリスト政党の倒し方
HOW TO DEFEAT POPULISM
イタリアでは2018年の総選挙で、ポピュリスト政党の「同盟」と「五つ星運動」が反移民感情に乗って躍進。彼らの支持基盤となったのも、北部の工業地帯と、長年経済的に低迷する南部の農村地帯だった。
しかし「古い経済」の衰退にあえいでいる地域も、新たな経済機会が見つかると、住民の投票行動が変わる。
アメリカでは、かつて鉄鋼業で栄えたピッツバーグ(ペンシルベニア州)や、製材業の中心だったグランドラピッズ(ミシガン州)が、ITやバイオ産業の拠点として変身を遂げるに従い、選挙でもナショナリズムやノスタルジーを訴える政治家から、中道政治家へと支持がシフトしてきた。
イギリスやフランス、ドイツでも同じような傾向が見られる。旧工業地帯ではポピュリスト感情が極めて強いが、最悪の時期を超えた地域では、大衆迎合的な政治家の人気は限定的だ。
ドイツの工業都市デュイスブルクは、ミクロ電子工学を中心に地域経済が再生し、2017年の総選挙におけるAfDの得票率は周辺地域の平均を大幅に下回った。
フランスの2017年総選挙でも、失業率が最も高い10地方行政区画のうち9つでは国民戦線が勝利したが、リヨンやストラスブールなど経済再生を果たした旧工業都市では、マクロン率いる中道派政党が勝利した。
ブレグジットを決めたイギリスの国民投票でも、経済再生の途上にあったリーズやマンチェスター、ニューカッスルといったかつての製造業の中心地はEU残留を支持した。
つまり明るい未来を展望できる地域では、人々は過激な主張に流されず、寛容な姿勢を持ち、先進的な見方を持つ心の余裕があるようだ。
こうした地域の変貌は偶然起きたわけではない。政府と民間のリーダーが、地域経済を転換するために取ってきた施策の結果である。
逆に言えば、政治家が何もしなければ、こうした地域の住民は引き続き疎外感を募らせ、ナショナリズムと保護主義、排外主義を支持し、国際的な連携から手を引くべきだと主張するだろう。
サプライチェーンの見直しを
バイデン政権が発足したことで、既に米欧関係には修復の兆しが見られる。これは米欧のラストベルトの将来にも大きな影響を与えるだろう。アメリカとヨーロッパは、貿易と安全保障という伝統的な協力領域を超えて、ラストベルト衰退の原因にも全面的に取り組む必要がある。