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クジラクジラの歌を地殻構造の調査・地震研究に活用する方法が開発される
クジラの「歌」が海底下の地殻構造の調査に活用できる可能性...... Science, 2021
<米オレゴン州立大学の研究によって、ナガスクジラの「歌」が海底下の地殻構造の調査に活用できる可能性があることが明らかとなった......>
極地などを除いて世界中の海に生息するナガスクジラは、海中を移動しながら低周波で鳴き、その鳴音は広範囲にわたって届く。このほど、ナガスクジラの「歌」が海底下の地殻構造の調査に活用できる可能性があることが明らかとなった。
その概念実証(PoC)の成果は、2021年2月12日、学術雑誌「サイエンス」で発表されている。
クジラの歌は海面と海底との間で跳ね返り、地震波として海底に伝わる
海底下の地殻構造の調査では、海上の船舶からエアガンで人工的に音波を発振し、音波が地殻を通して伝播して、海底に設置した海底地震計(OBS)に跳ね返ってくるまでの速度を計測するのが一般的だ。海底化の地殻の調査は、地震や津波につながる地震断層を調べることにつながる。
しかし、エアガンを用いた既存の調査手法は費用や手間がかかるうえ、エアガンの衝撃音がクジラやイルカなどの海洋哺乳類に影響を及ぼすおそれがある。
米オレゴン州立大学(OSU)の研究チームは、オレゴン州太平洋沿岸ブランコ岬から約100マイル(約161キロ)沖のブランコ・トランスフォーム断層に沿って海底地震計54個を配置し、地震の調査観測を行っていた際、ナガスクジラが鳴くたびに、海底地震計に強い信号が現れることに気づいた。
海中に響くナガスクジラの歌は大型船と同等の轟音で、海底地震計に記録されたもののなかには、10時間以上続くものもあった。
クジラの歌は海面と海底との間で跳ね返り、そのエネルギーの一部が地震波として海底に伝わる。この地震波は海洋地殻を通過し、海底堆積物やその下の玄武岩層、さらにその下の斑糲岩質の下部地殻で反射したり、屈折する。
これまで調査しづらい海域でも海洋地殻の調査に活用できる
研究チームは、3カ所の海底地震計で記録した計6回分のクジラの歌を分析。クジラの位置を特定するとともに、クジラの歌からの振動を用いて地殻層を図化することに成功した。また、クジラの歌の後に現れる信号をもとに算出した値と他の調査手法による値が一致することも確認されている。
クジラの歌は、現時点では既存の調査手法に比べて精度が劣るものの、海洋哺乳類への害が少なく、既存の調査手法を採用しづらい海域でも海洋地殻の調査に活用できる点で期待が寄せられている。
研究チームでは、機械学習(ML)を用いてクジラの歌の特定やその周辺の図化を自動化させるなど、さらなる研究をすすめる方針だ。