最新記事

日本社会

なぜ日本の政治家は低レベルで、あなたの妻の性格は悪いのか?

2021年2月8日(月)18時45分
立川談慶(立川流真打・落語家) *PRESIDENT Onlineからの転載

コロナ禍に思い出す、長門裕之さんの言葉

ワクチンや特効薬がまだまだ先の話になりそうなこのコロナ禍、この長期戦、はてさてわれわれは一体どうしたらよいのかなあと思っていた時に、10年以上前の話ですが、長門裕之さんから賜った言葉を思い出しました。

脚本家の安井国穂さんからのご指名で「検察審査会」というTBSの2時間ドラマに出演させていただきました。落語家の役で「そのまんま演じてください」とのことでしたが、私以外は、町内会の老人役の長門裕之さんをはじめ、主演で主婦役の高島礼子さんや、派遣社員役の雛形あきこさん、医者役の寺田農さんら一流の役者さんたちでした。みなさん、与えられた役に完全になりきっていて、当たり前かもしれませんがそのすごさを垣間見たものでした。

撮影は1週間にも及びましたが、長時間一緒にいると仲間意識も芽生えてくるものです。高島さんはじめたくさんの差し入れなどもあり、合間の食事も充実していたせいか和気あいあいとなった楽しい現場でした(またぜひ経験させていただきたいものです)。空き時間などにはいろんな方々と結構プライベートな話もさせていただくようにもなり、たまたま長門裕之さんと控室で二人きりになりました。

ちょうど真打ち昇進の準備期間だったせいか、さほど深刻ではありませんでしたが、カミさんと何かと衝突していた頃だったので、長門さんにズバリ聞いてみたのです。

「長門さん、夫婦円満の秘訣をお教えください!」

おしどり夫婦と評判の長門さんにお知恵を拝借しようとすがるようにして質問したのですが、

「談慶君、君は、自分の奥さんを嫌な女だと思う時があるかね?」
「いつもです!」

日頃のうっぷんを聞いてもらおうとして言い放ちました。

すると、長門さんはにっこり笑って、「そうかい、いやそれはね、君が嫌な男なんだよ」。一瞬、意味がわかりませんでした。

まるで禅問答です。

「奥さんが嫌な女に思えたら、君が嫌な男」

「どういうことでしょうか?」

「いいかい、奥さんを鏡だと思いなさい。奥さんがいい女の時は君がいい男なんだ。反対に嫌な女の時は、君が嫌な男なんだ」

ズシンと響きました。

なるほど、そういう見方があるのかと、さすが一流の表現者はわかりやすい言葉で一流の言い回しをするものだなあと感じたものです。

朝起きて、寝癖を直そうと鏡を見た時に、「ああ、髪の毛整えなきゃ」とまず自分の髪の毛を直そうとするのは当たり前のことです。

あの時の自分は、鏡の方に手を伸ばして、「鏡に映った自分の髪の毛」を直そうとしていたのではないかと、わが身に置き換えて反省したものです。

以後、まず自分に「カミさんは鏡に映った自分なのだ」と、チェックの目を働かせて気を配るようになりました。そのせいか、徐々に仲も良くなってゆき、いつの間にやら問題点は消えてしまっていました。

おかげさまで、近頃では自分が悪くなくても謝るように努めてきているせいか(笑)、円満そのものではあります。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独メルセデス、安価モデルの米市場撤退検討との報道を

ワールド

タイ、米関税で最大80億ドルの損失も=政府高官

ビジネス

午前の東京株式市場は小幅続伸、トランプ関税警戒し不

ワールド

ウィスコンシン州判事選、リベラル派が勝利 トランプ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中