最新記事

イラン

国境を越えて反体制派の暗殺や弾圧を活発化させるイラン

Iran Expands Foreign Assassinations While Decrying U.S. Killings: Report

2021年2月5日(金)15時00分
デービッド・ブレナン

パリで街頭活動を行うイラン反体制派のグループ Charles Platiau-REUTERS

<アメリカやイスラエルによる暗殺や妨害工作の被害をアピールする影で、自分たちはさらに手広く反体制派を弾圧してきたことが明らかに>

アメリカやイスラエルによる諸外国での秘密裏の暗殺計画や身柄の引き渡し、反体制派や政敵への嫌がらせの疑惑を声高に非難してきたイランが、その一方で同様の暗殺や抑圧行為を拡大させていたことが、人権団体の調べで分かった。

国際的な人権擁護団体「フリーダムハウス」は、2月3日に新たな報告書「国境を越えた抑圧」を発表した。報告書では、ここ数年の間にさまざまな手法を使って、国外にいる反体制派を威嚇したり殺害したりした、複数の権威主義国家を名指ししている。

報告書は、2014年以降に少なくとも31の国が行った608件の直接的、物理的な国外での抑圧行為について分析している。これらの抑圧行為は、アメリカをはじめとするリベラルな民主主義国家、あわせて79カ国で展開された。フリーダムハウスによれば、2014年以降に(前述の31の国から)直接的または間接的な攻撃の被害を受けた人は、およそ350万人にのぼる。

その国の1つがイランだ。イランはドナルド・トランプ前米大統領時代、諸外国(特にアメリカとイスラエル)による陰謀の「被害者」としての立場を強調していた。

「暴力性や洗練度の点で際立っている」

イランの「被害」の例として最もよく知られているのは、2020年1月にバグダッドでガセム・ソレイマニ(イラン革命防衛隊司令官)が米軍のドローン攻撃によって殺害された事件と、同11月に核科学者のモフセン・ファクリザデがテヘラン郊外で、イスラエルとのつながりが疑われる複数の人物から銃撃を受けて死亡した事件だ。

イランの当局者たちはまた、アメリカとイスラエルが2015年のイラン核合意の締結以前にも、イランの複数の核科学者を暗殺したと主張。イランの核関連施設を狙ったコンピューターウイルス「スタックスネット」によるサイバー攻撃などについても、アメリカとイスラエルによる妨害工作だと非難してきた。

しかし諸外国による暗殺、妨害工作や嫌がらせを非難する一方で、イラン政府は「国境を越えた抑圧を最大限に」実行しているとフリーダムハウスは指摘する。

「イラン指導部は、アメリカとイスラエルはテロリストを支援していると非難し、国外亡命者への攻撃については、この両国との闘いと同等の闘いの一環として行ったものだと主張することが多い」と報告書は指摘し、さらにこう続けた。「だがイランによる作戦は、国家による承認、使用される暴力の度合いや多種多様な洗練された手法という点で際立っている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中