最新記事

アメリカ政治

トランプ、弾劾裁判で「元大統領」の特権を享受できるのか?

2021年1月31日(日)10時55分

1月6日の連邦議会議事堂襲撃を煽動した責任を問うドナルド・トランプ前大統領に対する弾劾手続を機に、大統領経験者に与えられる待遇の一部を失う可能性があるのではないかとの観測がネットで広がっている。だが法律専門家によれば、現行法のもとでは、仮に弾劾が成立した場合でも、年金やオフィススペース、身辺警護などトランプ氏に与えられる特典はそのまま維持されるという。ジョージア州バルドスタで2020年12月撮影(2021年 ロイター/Jonathan Ernst)

1月6日の連邦議会議事堂襲撃を煽動した責任を問うドナルド・トランプ前大統領に対する弾劾手続を機に、大統領経験者に与えられる待遇の一部を失う可能性があるのではないかとの観測がネットで広がっている。

だが法律専門家によれば、現行法のもとでは、仮に弾劾が成立した場合でも、年金やオフィススペース、身辺警護などトランプ氏に与えられる特典はそのまま維持されるという。

トランプ氏は、比較的曖昧さの残る「元大統領法」に助けられることになりそうだ。

「元大統領法」とは

1958年に成立した法律で、元大統領に対して生涯にわたる特典を与えるものだ。特典の内容は、「適切なオフィススペース」、シークレットサービスによる身辺警護、年間約10万ドル(約1042万円)のスタッフ人件費補助、現在約22万ドル相当の年金などである。

この法律は、1953年に退任したハリー・トルーマン元大統領が、大統領就任前の新規事業の失敗で債務に苦しんでいたことから、同氏を金銭的に救済する目的で可決された。

トランプ氏の場合、これらの特典の価値は合計で年間100万ドルを超える可能性がある。政府支出を監視している全米納税者連合基金の報告書によれば、米国の納税者は、存命の元大統領4人に特典を提供するために毎年約400万ドルを費やしているという。

この報告書によれば、最も価値の高い特典はオフィススペースで、2020年、ビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマ元大統領は、国費負担のオフィス賃料としてそれぞれ50万ドル以上を受け取っている。

大統領が特典を剥奪されることはあるか

ある。ただし、ミシガン州立大学のブライアン・カルト教授(法学)によれば、大統領の任期中に解任された場合に限られる。下院による弾劾訴追決議だけでは、この特典への影響はない。

多くの連邦議会議員や著名人が、退任の迫ったトランプ氏の解任を求めたが、同氏はその運命を免れた。したがって、退任後の特典は安泰である。

ただし、安心はできない。法律はいつ改正されるか分からないからだ。現代の大統領は高収入を得る機会に恵まれており、退任後も公的な支援は必要ないとして、「元大統領法」は不必要なコストを生んでいるという主張もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中