ゲームストップ株を暴騰させたアマチュア投資家たちの反乱と疑惑の幕切れ
Individual Investors Using GameStop to Game the System Risk Losing It All
いかにもオールドエコノミーな感じのゲームストップの株価が2万%近く急騰(1月27日、マンハッタン) Carlo Allegri-REUTERS
<株価乱高下の背景には結束してゲームストップ株を買い上げ株価を吊り上げた怒れる個人投資家たちの存在が>
米株式市場では、ビデオゲーム小売チェーン「ゲームストップ」の株価があり得ない高騰を続けた後、一転、半値まで暴落したことが大きな注目を集めている。
ただの投機ではない。急騰の背景にはウォール街を支配してきたヘッジファンドに大損させる目的で、ネット上で意気投合したアマチュア投資家集団が株価を吊り上げていたようだ。そこに普通の小口投資家も参加して、株価はますます上がった。
彼らの取引を支えたのは、「株式市場を民主化する」を旗印に手数料無料で人気を博す、手数料無料の投資アプリ、その名も「ロビンフッド(金持ちから盗んで貧乏人に分け与える義賊)」だ。ところがそのロビンフッドが、突然小口投資家たちを見限り、株価は暴落。いったい何が起こったのか──。
ゲームストップは、時代遅れのショッピングモールでビデオゲームのパッケージソフトを売る二流の、衰退しつつある企業のはずだった。しかしその株価はここ数週間で急騰。1月28日の午前には、過去52週間の最安値である2.57ドルから1万8693.77%上げて483ドルを記録した。しかしその後は55.8%も急落し、同日の終値は193.60ドルとなった。
株価が暴落するほうに賭けて空売りを仕掛けたヘッジファンドのポジションが強制的に決済される「ショートスクイズ」が発生したのだろうと、投資調査会社モーニングスターの米市場担当ストラテジスト、デーブ・セケラは本誌に語った。大損をしたはずのヘッジファンドは教訓を学ぶべきだと。
「ショートスクイズは何も新しい手法ではない。機関投資家は長年、この手法を使ってきた」と彼は調査メモの中で述べた。「今回、何が新しい要素かといえば、取引に参加した人々だ。個人投資家が『クラウドソーシング』で大量に買い上がったため、空売り投資家が大きな打撃を受けた」
巧妙な株価操作なのか
別のアナリストは、株価を吊り上げた者たちには、株価を操作しているという自覚があったと指摘した。
ピッツバーグに拠点を置く非営利の調査機関「ザ・ファンデーション・フォー・ザ・スタディー・オブ・サイクルズ」のリチャード・スミス最高経営責任者は、「これは巧妙な作戦だったのだと思う」と本誌に語った。「背景には、株取引で多額の利益を叩き出すヘッジファンドなど機関投資家などへの怒りがある。彼らの中には、手持ちの資金を全部ゲームストップに注ぎ込むと息巻く者もいたが、そんな常軌を逸した取引をしていないことを願っている」