最新記事

米政治

バイデン政権始動:最大の問題は共和党がトランプと縁を切れるかどうか

A FRESH START FOR AMERICA

2021年1月26日(火)11時10分
マイケル・ハーシュ(フォーリン・ポリシー誌上級特派員)

異例の厳戒態勢の中で就任宣誓を行ったバイデン新大統領(左) ANDREW HARNIK-POOL-REUTERS

<バイデンは「団結」を訴え、トランプ後のアメリカが始まった。だが「トランプ主義」はまだ死んでおらず、共和党自体も今後はイデオロギー的な再生を迫られるのではないか>

(※本誌「バイデン 2つの選択」特集より)

政治に新たなユニティ(結束、団結)の風を吹かせる。ジョー・バイデンはそう誓って、1月20日に晴れて第46代アメリカ合衆国大統領となった。その場が大勢の州兵や警官に守られていたのは、前任者ドナルド・トランプの残した混乱と怒りの傷が深く、新大統領の歩むべき道が険しいことの証左だ。

長年の盟友たち(上院共和党を仕切るミッチ・マコネル院内総務を含む)にも見放されたトランプは、就任式の始まる数時間前に寂しく首都ワシントンを去った。新大統領の就任式に前任者が出席しないのは、実に152年ぶりのことだった。
20210202issue_cover200.jpg
少しでもいいからユニティを取り戻そう。バイデンはそう訴えた。この4年間で、それがいかに「民主主義の下でも失われやすいものであるか」を思い知らされたからだ。

新型コロナウイルスのせいで、就任式の会場に歓喜する国民の姿はなく、代わりに無数の星条旗が揺れていた。バイデンは言った。

「赤い州と青い州を争わせるような野蛮な戦争は終わらせよう。......みんなで出直し、互いの声にもう一度耳を傾けよう。......政治が、全てを焼き尽くす山火事であってはならない」

バイデンは史上最高齢の78歳で大統領となった。ほぼ半世紀にわたる彼の政治生活は、今まさに集大成の時期を迎えた。過去2回の大統領選では惨敗を喫し、3度目の挑戦でようやくその座を射止めた。

トランプの「遺産」を全否定

しかもバイデンには、議会で長年にわたり共和党と協力してきた実績がある。上院の外交委員会と司法委員会を率いていた時期の手腕は高く評価されている。

バラク・オバマ政権を副大統領として支えた8年間では、米軍のイラク撤退などで主導的な役割を果たし、米史上屈指の影響力を持つ副大統領と評された。

最初の100日間でトランプ時代の政策の多くを覆すと、バイデンは宣言した。

最も緊急を要するのは新型コロナウイルス対策だが、就任初日には大統領令で地球温暖化対策の国際合意であるパリ協定への復帰や国境の壁の建設中止を命じ、主としてイスラム圏を対象とした入国制限も撤廃した。

不法移民対策では、8年間での市民権取得への道筋を示す法案を議会に送付。トランプが表明したWHO(世界保健機関)からの脱退も撤回した。

いずれも前向きな動きだが、まだ「トランプ主義」は死んでいない。

先の選挙でトランプに投票した有権者は7400万人、1月6日の連邦議会の承認手続きでもバイデンの勝利を認めなかった共和党議員は上下両院合わせて147人いて、大統領として最後の演説でトランプが言った「米史上で最も偉大な政治運動」なるものの継続に懸けている。現に共和党支持の有権者の過半数は、今も選挙は違法だったと考えている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震、死者1700人・不明300人 イン

ビジネス

年内2回利下げが依然妥当、インフレ動向で自信は低下

ワールド

米国防長官「抑止を再構築」、中谷防衛相と会談 防衛

ビジネス

アラスカ州知事、アジア歴訪成果を政権に説明へ 天然
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 9
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中