トランプ支持者たちがロシアに移民希望?──ロシアの巻き返しが始まった
Russia Exploits U.S. Turmoil for Propaganda
迫害を恐れてアメリカからロシアに逃れた人物といえば、最も有名なのがエドワード・スノーデンだ。スノーデンは米国家安全保障局(NSA)による違法な大規模監視システムの詳細を記した機密文書を暴露した後、米政府の訴追を逃れるためにロシアに亡命した。スノーデンをかくまったプーチンは、ロシアを「権威主義や政府の権力乱用と闘う者たちの避難所」とアピールすることに成功した。
しかしロシアは決して、言論や政治的活動の自由が保障されている場所ではない。ウラジーミル・プーチン大統領率いるロシア政府は近年、インターネットの規制を大幅に強化して、反体制派の検閲や政府に批判的なサイトの遮断を行ってきた。プーチンによる独裁体制を声高に批判するジャーナリストや活動家は、嫌がらせを受けたり収監されたりしてきた。殺害された者もいる。
17日のナワリヌイの一件も然りだ。反体制派指導者のナワリヌイは、2020年8月の暗殺未遂事件後に療養していたドイツからロシアに帰国した直後に、ロシア当局に身柄を拘束された。
民主主義の「祝賀は終わった」
バイデン次期政権の国家安全保障担当大統領補佐官に就くジェイク・サリバンは、ナワリヌイの身柄拘束を強く非難。「直ちにナワリヌイを釈放すべきであり、彼の命を狙った凶悪事件の犯人は責任を問われるべきだ」とツイッターに投稿した。サリバンはさらに、ナワリヌイに対する執拗な攻撃は「人権侵害にあたるだけではなく、声を聞いてもらいたいロシアの人々への侮辱だ」と批判した。
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は18日、国際社会の怒りは「ポーズ」だと一蹴。ナワリヌイの身柄拘束はアメリカにとって、国内の対立から国民の注意を逸らす恰好の材料だろうと述べた。
ラブロフはモスクワで開いた記者会見で、西側諸国の政治家が「ナワリヌイのロシア帰国のニュースに嬉々として飛びついた」と皮肉った。「西側諸国の政治家たちはこの問題を批判することで、リベラルな発展モデルが直面している深刻な危機から国民の注意を逸らすことができると考えているようだ」
プーチンの熱心な支持者たちは、米議事堂襲撃事件をこぞって批判した。ロシア下院外交委員長のコンスタンティン・コサチョフはフェイスブックに「民主主義の祝賀は終わった」と投稿。世界の民主主義の手本を自認してきたアメリカの主張はくじかれたと主張した。
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