パーラー排除で息を吹き返したSNS「ギャブ(Gab)」は、かつて反ユダヤ主義の温床だった
Fringe Social Network Gab Says it Gained 600,000 Users as Parler Shut Down
iPhone画面に並んだパーラー(赤)とツイッターのアイコン BackyardProduction/iStock.
<米議会乱入事件を受けて、フェイスブックやツイッターはトランプのアカウントを閉鎖し極右SNSを排除しているが、代替右派サイトの恨みは深まるばかり>
「ギャブ(Gab)」は、主流プラットフォームから締め出された白人のナショナリストや陰謀論者、極右、人身攻撃者などが集まる過激なSNSサイトの一つとして知られている。その最高経営責任者(CEO)であるアンドリュー・トーバは1月10日、一日の新規ユーザー獲得数がおよそ60万人に上ったと述べた。
2016年にギャブを立ち上げた保守派のプログラマーのトーバは、1月10日の投稿で、ギャブには新規ユーザーがなだれ込んでおり、サーバー10台を新たに追加して対応していると述べた。
確認はされていないが、ギャブのユーザーは本当に急増しているようだ。背景には、「言論の自由」を掲げるライバルアプリ「パーラー(Parler)」が、アップルとグーグル、そしてアマゾンからも排除されて利用できなくなったことがある。パーラーが、ヘイトや暴力を煽りかねないコンテンツの検閲を一切行わず、フェイスブックやツイッターが締め出したトランプ大統領とその支持者による過激な投稿の受け皿になっていたからだ。
トーバは1月10日、ギャブのツイッターアカウントに動画を投稿(その後、削除)。「表現の自由を持たない世界中の多くの人々に対して、アメリカ合衆国憲法修正第1条に定められた言論の自由を提供する」機会としてギャブが残されたと主張、政府の対抗措置も予期していると述べた。
会員にシナゴーグ襲撃事件の犯人が
「われわれは毎日60万人の新規ユーザーを獲得しており、その数はますます増え続けるだろう。その数は数日で100万人に達するかもしれない」とも言った。
パーラーと同じく投稿の検閲を行わなかったギャブは、かつて今のパーラーと同じ状況に追い込まれたことがある。2018年10月27日に、ペンシルベニア州ピッツバーグのシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)で銃乱射事件が起き、11人が殺害された。その犯人ロバート・バウアーズが、ギャブに反ユダヤ主義の書き込みをしていたことが発覚し、大手アプリ配信サービスや決済企業に取引を停止された。
だがギャブは2018年11月、ウェブサービスとして復活した。ユーザー向けガイドラインには、「不法な脅し」や「差し迫った不法行為の扇動」をすべきではないと書かれているが、「自由に発言するという、神から与えられた権利を行使する」ユーザーを処分しない、という方針は変わっていない。
ニュースサイトのヴォックス(Vox)が2018年に詳細に調査した報道によると、ギャブは「過激な反ユダヤ主義者と反黒人主義者がコンテンツを投稿する爆心地」になっていたという。