見逃されたアラート アメリカ議事堂暴動を許した警備の「死角」
バウザー市長は結局、乱入者が最初のバリケードを乗り越えてから45分前後が過ぎた午後2時ごろ、州兵の出動を要請。ミラー国防長官代理が2時半に、コロンビア特別区の全州兵を動員した。
そのころまでに議事堂内では、議場で議員らにガスマスクが配られ、警察がペンス氏や上下両院の議員を退避させていた。乱入者排除にはペッパー弾や催涙ガスが使用された。乱入者たちは議事堂の備品でドアにバリケードを築き、抵抗しようとしたが、その後は迅速に制圧された。
議会警察の銃撃によって、カリフォルニア州からやってきた元空軍所属の女性、アシリ・バビットさんが議事堂内で撃たれ、死亡した。ソーシャルメディアへの書き込みからは、極右の陰謀論を信奉していたことがうかがえる。
サンド氏の声明では、バビットさんは他の乱入者たちとともに、制止を突破して議員が避難している下院本会議場に向かおうとし、撃たれた。撃った警官は、通常の規定に従い事実関係の調査が済むまで休職になったという。
「一線を越えたテロ行為だ」
議事堂乱入は前代未聞の出来事だったとはいえ、危険信号は何日も前から十分に点滅していた。多くのトランプ氏支持者は、極右派が集まる「パーラー」といった、ツイッターに似たソーシャルメディア上で、そろってワシントン行きを計画していたからだ。
投稿内容を見ると、一部では法の目をかいくぐって武器をワシントンに持ち込む方法が議論されていた。極右団体「プラウド・ボーイズ」のエンリケ・タリオ指導者はパーラー上で、同団体が6日のワシントンの集会に参加すると約束したが、4日に当局によって拘束された。昨年12月のデモで建造物を破壊し、銃の弾倉を所持していた容疑だ。本人は罪を認めていないものの、5日にワシントン市からの退去を命じられていた。
プラウド・ボーイズを組織する1人のジョー・ビッグス氏は、6日のデモには65人以上のメンバーが参加したと認めたが、議事堂に乱入した中にメンバーがいたかは分からないと答えた。自身はメンバーに、警官との衝突を避けるよう助言していたと述べた。
過激主義者のソーシャルメディアでの活動監視を担当していた元情報機関高官によると、陰謀論を信じる集団「Qアノン」に関係するツイッターのアカウントで、6日のトランプ氏の集会や暴力行為に言及した投稿は1月1日以降で1480件あった。その中には「愛国者」に向けて「決起」を呼び掛ける内容も含まれていたという。
議会警察で情報活動を担当していたニール・トラグマン氏は、今回の議事堂乱入は想定の域を超えたものだったと強調した。議会警察が普段から備えているのは、もっと小規模で、法を守った上で言論の自由を最大限発揮しようと考える集団だとし、「議会警察の長官が誰であっても、これほど異質な状況にうまく対処できたかは分からない」とも述べた。
トラグマン氏によると、結局、責任は暴動をそそのかしたトランプ氏にある。「これはもはや抗議とは言えない。許されるべき、一線を越えたテロだ」と話した。
(Joseph Tanfani記者、John Shiffman記者、Brad Heath記者、Andrea Januta記者、 Mark Hosenball記者)
(*記事執筆時の情報に基づいています。)
【話題の記事】
・1月20日、トランプは「自分の大統領就任式」に出る?
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
→→→【2021年最新 証券会社ランキング】
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら