最新記事

感染症対策

スイス、変異種めぐり英国人スキー客に自己隔離要請 混乱したドタバタ劇

2021年1月5日(火)19時30分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

感染対策を訴える標識が立てられているスイスのスキー場  DENIS BALIBOUSE - REUTERS

<年末のスイスで起きたイギリス人スキー客めぐる混乱は、今後世界各国でも起きるのか?>

自己隔離 正確な数の把握は難しい

スイス南部ヴァレー州は名峰マッターホルンのふもとのスキーリゾート地ツェルマットをはじめ、各地でスキーが楽しめる。同州の西側にあるスキーリゾート地ベルビエ(ヴェルビエ)では、イギリスからの観光客約200人が、新型コロナウイルス感染予防措置の10日間の自己隔離を守らず姿を消していたことがクリスマス直後にわかり、スイスはもとより、日本やヨーロッパ諸国でも大きく報じられ注目が集まった。

ベルビエは、スキーツーリズムの新時代の発展を促進しようと2013年から始まったワールド・スキー・アワードで、2019年、スイスのベストスキーリゾートに選ばれたほど評判が高い。

スイス放送協会によると、ヴァレー州は新型コロナウイルス変異種のために、同州に滞在中および同州をすでに去ったイギリスと南アフリカからの観光客を特定しようとしているが、その数を正確に推定することは困難だという。

スイス政府は変異種の感染拡大を防ぐため、12月14日以降にイギリスと南アフリカからスイスに入国した人(スイス国籍保持者も含む)に外出せず、他人との接触を避ける10日間の自己隔離を義務付けた。これは自宅や滞在施設にこもるだけでなく、スイス入国後にスイス当局への報告も伴う。自己隔離をしない人に対しては罰金を課す場合がある。

この措置がスイスで公に発表されたのは12月21日。発表の1週間前の入国に戻ってカウントし即刻自己隔離を強いられたため、驚いたイギリス人観光客は多かったはずだ。同時に、21日をもって両国からの観光客の入国は禁止となった。

州内で、取り締まりは実施していた

ヴァレー州のジャン-ベルナルド・モワ健康振興会長によると、12月14日以降に州全体で特定されたイギリスからの観光客は863人、南アフリカからの観光客は13人、計876人だった(前出スイス放送協会)。863人のうち291人はスイス連邦内務省保健局から得たリストを利用し、残る585人は各観光局や自治体からの情報だという。

しかしモワ会長にとって、この863人は一部の数に過ぎない。収集したデータでは、イギリスと南アフリカ両国からの観光客は、たとえばツェルマットには125人、ベルビエには114人だったという。だが実際にはそれ以上いたことは明らかで、当局に自己報告しなかったり、取り締まった時にチェックできなかった漏れがあるとみられる。

とはいえ、モワ会長いわく、ヴァレー州は初めからイギリス人の追跡を非常に真剣に行ってきて、同健康振興会が州内で150回取り締まったことは州警察へ報告済みだった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

貿易分断で世界成長抑制とインフレ高進の恐れ=シュナ

ビジネス

テスラの中国生産車、3月販売は前年比11.5%減 

ビジネス

訂正(発表者側の申し出)-ユニクロ、3月国内既存店

ワールド

ロシア、石油輸出施設の操業制限 ウクライナの攻撃で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中