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フランス人の私が日本に戻って心底感じた「自由」とは コロナが母国から奪った「liberté」

2021年1月5日(火)16時00分
ドラ・トーザン(国際ジャーナリスト、エッセイスト) *東洋経済オンラインからの転載記事

これに対して書店の経営者が、スーパーや大型店では本の販売ができるのになぜ個店を対象にするのか、と抗議すると、政府は大型店などでの本の販売を禁止しました。次に「問題」になったのがアマゾンですが、なんとフランス政府はどうしたらフランス人がアマゾンで書籍を購入できないようになるか、を考えたのです。こんな馬鹿げだことがあるでしょうか。

外出規制についても同じです。二度目のロックダウンが始まったとき、フランス政府は「散歩は1時間以内なら可能、ただし1キロ以内」という決定をしました。これには何の根拠もありません。これに対してフランス人が抗議を行った結果、1日に外出できる時間は3時間に、移動できる距離は20キロにまで増えました。ただし、なぜこの数字になったのかはいまだにわかりません。

日本とフランスの違いは?

日本では、賛否両論があるものの、「GoTo」キャンペーンが実施され、多くのお店がオープンし、人々は今までとほぼ同じように仕事をし、子どもたちは公園で遊び、サッカーの試合を観戦しています。日本に帰ってきて日本の「エネルギー」に大きな感銘を受けました。日本では「ワーケーション」のように、コロナ禍でも新しいアイデアを取り入れていることも素晴らしいと思います。

私がこうした点を称賛すると、日本人の友人たちは日本の習慣が感染拡大の抑制につながっていると話します。家に上がる前に靴を脱ぐ、挨拶の際にキスや握手をしない、人との距離を自然と保つ、マスクを着用すること慣れている、そして手を洗う習慣がある(あるいはおしぼりを利用する)、ことなどです。そして、何より日本人には自制心があるように見えます。警察にチェックされなくても、多くの飲食店は要請されれば、夜10時には閉店するのですから。

日本で最も重要なのは、他人の目にどう映るか、人が自分たちをどう見るか、世間や社会が自分たちをどう見るかということです。これは罰金よりはるかに強力です。

私から見ると、日本人のこうした態度はコロナと「共に(with)」(あるいはコロナ「後に(post)」)生きるというもので、コロナに「対抗する」というものではありません。ヨーロッパでは、ウイルスと「闘う(fight)」や「戦争(war)」という言葉が使われています。これは神道や仏教の影響かもしれません。人間は自然の一部であり、欧米人のように自然は戦う相手ではないのです。

私はいつも何よりも自由に重きを置いています。そして、フランス人にとって最も重要な原則は「liberté」(自由)だと思ってきました。それなのに今のフランスには自由がなく、人々は罰を恐れるようになってしまいました。今回日本に到着したときに感じたこの信じられないほどの開放感と安堵感を私はこれから先も忘れることはないでしょう。自己隔離中でさえ、フランスに比べれば天国だったのですから......。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら
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