最新記事

韓国社会

韓国、「正義」のユーチューバーらが暴走 児童性犯罪者の出所トラブルで周辺住民は恐怖の日々

2020年12月23日(水)20時00分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

出所したチョ・ドゥスンを待っていたのは

そして、今年12年の刑期を終えたチョ・ドゥスンは12月12日に出所する運びとなった。出所するとはいえ、今後7年間GPS付き電子足輪の着用義務と、性犯罪者情報公開サイト「알림e」 に5年間の身元公開が義務付けられている。

当然のことながら、恐ろしい児童性犯罪者が出所することについて、世論は反対の声を上げ、2017年9月には、韓国大統領府のウェブサイトにある国民請願掲示板で「チョ・ドゥスン出所反対」の嘆願が上がり、なんと61万5千人もの国民が署名して話題を集めたほどだ。

しかし確定して既に執行中の刑期を変更できるわけもなく、チョ・ドゥスンは犯行から12年後となるこの12月12日未明、刑期を終えてソウル南部刑務所を出所、自宅のある安山市に戻ることとなった。

出所当日の12日、チョ・ドゥスンの乗った車が出てくると、多くの市民が車を取り囲み、ユーチューバーやその他動画配信者が生配信を始めた。一部の若者は車の上に乗り、飛び跳ね、またあるユーチューバーは車を足で蹴って壊そうとした。

アンサン警察署は20日、公務執行妨害及び共用物損壊疑いで拘束令状を申請したと明らかにした。さらに、警察は、チョ・ドゥスンに対して報復を予告し話題になった格闘技選手と、ユーチューバー2人も同じ疑いで調査した後、令状申請可否を決める方針であるという。

また、チョ・ドゥスンの自宅周辺にも多くの人が取り囲み、出所日数日前から警察がガードしなければならない状態だった。警察は、家の前で騒ぎを起こした20代の若者8人を騒乱行為と公務執行妨害などの疑いで調査し立件するとしている。

その他、警備の警察に喧嘩を売るような行為や、家の裏のガス管から壁を上って侵入しようとした者など、その行為はエスカレートしていった。出所の日に、近隣の住民からアンサン警察所へ、騒音などチョ・ドゥスン騒動に関連した通報は午前中だけで100件近くも上ったという。

騒ぎに乗じて再生回数稼ぐ動画配信

今回の騒ぎは、市民の怒りはもちろんだが、10〜20代の若者が中心となって騒ぎを起こしていたようにみえる。特にライブ中継をする人などユーチューバーたちが暴走している状態だ。

動画サイト「アフリカTV」は、韓国で人気の高い個人配信サイトだが、ある配信者はチョ・ドゥスンの生配信を3日間行い、放送中の広告収入でなんと1700万ウォンも稼いだという。

この配信者は、その後「この広告収入はアンサン市へ寄付する」と公表したが、このようにチョ・ドゥスンの出所を利用し大金を稼いだ配信者は大勢いただろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、中距離弾道ミサイル発射と米当局者 ウクライ

ワールド

南ア中銀、0.25%利下げ決定 世界経済厳しく見通

ワールド

米、ICCのイスラエル首相らへの逮捕状を「根本的に

ビジネス

ユーロ圏消費者信頼感指数、11月はマイナス13.7
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中