最新記事

中国

中国輸出管理法――日本がレアアース規制対象となる可能性は低い

2020年12月4日(金)19時52分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

今年10月17日に全人代常務委員会で最終的に可決した「輸出管理法」には「国と地域によって異なる」という趣旨の条項がある。それに相当した条文を拾ってみたい。以下の条文は中国語の「出口管制法(輸出管理法)」からの引用で、それを私なりの日本語に訳してみた。

●第八条 国家輸出管理局部門は関連部門と協力して輸出管理政策を策定し、その内の主要政策は国務院に提出して承認を得るか、もしくは国務院と中央軍事委員会に提出して承認を得なければならない。国家輸出管理部門は、管理対象品目が輸出される国と地域に対する評価を行い、そのリスクレベルを確定し、それに応じた管理措置を講じることができる。

●第十条 国家の安全保障と利益保護に基づき、不拡散など国際的義務を履行する必要性に鑑み、国務院の批准、あるいは国務院と中央軍事委員会の批准を得て、国家輸出管理部門は、関連部門と連携して、関連する管理品目の輸出を禁止したり、特定の目的国や地域および特定の組織や個人に対して、関連する管理品目の輸出を禁止したりすることができる。

●第十三条 国家輸出管理部門は以下にある要素を総合的に考慮して、輸出経営者による輸出管理品の申請に対して許可あるいは不許可の決定を下すことができる。

(五)輸出目的地の国あるいは地域(筆者注:列挙してある項目の中の関連項目)

●第四十八条 中華人民共和国の国家安全と利益を害するために輸出管理措置を濫用した如何なる国・地域に対しても、中華人民共和国は、実情に基づいて、その国・地域に対して対等の措置を講じることができる。(引用はここまで)

概ね以上だ。

これにより何が言えるかと言うと、たとえば日本が恐れているレアアースの場合、日本がファーウェイなどに関してアメリカ並みの厳しい制裁措置を取りさえしなければ、日本は(おそらく、決して)レアアースの規制対象国にはならないだろということが言えるのである。また、特定の組織や個人が対中制裁的な行動を取った場合や(他の項目にあるような)香港民主化運動などを応援したりなどした場合は、ピンポイントに規制対象となる場合もあるということも意味している。

だからと言って尖閣問題などは別問題

だからと言って、11月30日付けのコラム<日本の外交敗北――中国に反論できない日本を確認しに来た王毅外相>に書いたような、領土問題に関する譲歩までをしてしまうのは、明らかにまちがいだ。

これではまるで「レアアースが欲しいので、領土に関しては反論しません」と白旗を挙げているような意思表示になる。金のために魂を売ったようなものだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国はTikTok悪用、18歳以上の米国民過半が同

ビジネス

ファーウェイ、消費者向け事業トップが同部門の会長に

ワールド

米UCLA、イスラエル抗議でデモ隊が衝突 

ワールド

ブリンケン氏はイスラエル外相、ハマス幹部が批判 停
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 7

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 8

    なぜ女性の「ボディヘア」はいまだタブーなのか?...…

  • 9

    衆院3補選の結果が示す日本のデモクラシーの危機

  • 10

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中