コロナワクチン接種、EUに先駆けスイスでも開始へ 一方で国民の多くは懐疑的
優先者以外のすべての成人は十分なワクチン量が入手でき次第、接種を受けることができる。子どもと妊婦は研究データがまだ利用できないため、いまのところ「ワクチン接種戦略」の対象にしていない。
スイスメディックの承認長クラウス・ボルテ氏は、副作用について説明している。注射した上腕の箇所が赤くなったり痛くなったりすることはあり、倦怠感、吐き気、微熱なども現れるかもしれないが、それはワクチンが効いているという意味だそうだ(チューリヒのローカルテレビ番組TeleZüri)。
世論調査では多くの国民が懐疑的
一方、スイス国民の中にはワクチン接種に対してまだ懐疑的な人も多いようだ。スイスの公共放送が実施した第5回「コロナアンケート」(10月23日から11月2日まで実施、15歳以上4万人以上から回答)では、「新型コロナウイルスワクチン接種がスイスで承認されたと想像してみてください。次のうち、あなたにはどれが当てはまりますか」と質問した。結果は以下の通りだった。
●すぐにワクチン接種を受ける 15.6%
●副作用がないことが証明されれば受ける 29%
●完全に予防されるなら受ける 7.6%
●周囲からの大きな圧力がある場合にのみ受ける 2.3%
●受けない=最初は待つ 17.5%
●受けない=ワクチン接種を受けない 28%
国内大手メディアTamediaが実施した世論調査(11月末実施、1万4千人以上が回答)でも「自発的にワクチン接種しますか」という質問に、27%がはい、26%がどちらかというと、はいと答え、25%がいいえ、17%がどちらかというと、いいえと答えた。男女別にみると、ワクチン接種をしたいと答えた男性は60%だったが、女性は46%にとどまったという。
否定的な反応も随分多いのは、なぜだろう。これについて、スイスの公共放送国内編集チームのミカエル・ペリコン副部長は、2つのことを指摘している。1つは、スイスでは西洋医療(現代医療)に不信感が抱かれ補完・代替医療の人気が高くなったため。もう1つは、ワクチン懐疑論が、口コミやユーチューブを通じて広まっているためだ(これは、2014年の政府の調査で明らかになったという)。
町の声を拾ったニュース番組が紹介した否定的な意見としては、「予防接種一般に懐疑的だから、新型コロナウイルスワクチン接種もしないと思う。それに、すべてが早く進み過ぎていて、ちょっと信用できない」「承認までの期間が早すぎる。接種はしない」「副作用に関してまだ何もわかっていない段階。絶対に接種は待つ」と、通常より承認が早いことに疑問を抱いている様子もうかがえた。
[執筆者]
岩澤里美
スイス在住ジャーナリスト。上智大学で修士号取得(教育学)後、教育・心理系雑誌の編集に携わる。イギリスの大学院博士課程留学を経て2001年よりチューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信の通信員として従事したのち、フリーランスで執筆を開始。スイスを中心にヨーロッパ各地での取材も続けている。得意分野は社会現象、ユニークな新ビジネス、文化で、執筆多数。数々のニュース系サイトほか、JAL国際線ファーストクラス機内誌『AGORA』、季刊『環境ビジネス』など雑誌にも寄稿。東京都認定のNPO 法人「在外ジャーナリスト協会(Global Press)」監事として、世界に住む日本人フリーランスジャーナリスト・ライターを支援している。www.satomi-iwasawa.com
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