最新記事

感染症対策

コロナワクチン接種、EUに先駆けスイスでも開始へ 一方で国民の多くは懐疑的

2020年12月22日(火)10時20分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

優先者以外のすべての成人は十分なワクチン量が入手でき次第、接種を受けることができる。子どもと妊婦は研究データがまだ利用できないため、いまのところ「ワクチン接種戦略」の対象にしていない。

スイスメディックの承認長クラウス・ボルテ氏は、副作用について説明している。注射した上腕の箇所が赤くなったり痛くなったりすることはあり、倦怠感、吐き気、微熱なども現れるかもしれないが、それはワクチンが効いているという意味だそうだ(チューリヒのローカルテレビ番組TeleZüri)。

世論調査では多くの国民が懐疑的

一方、スイス国民の中にはワクチン接種に対してまだ懐疑的な人も多いようだ。スイスの公共放送が実施した第5回「コロナアンケート」(10月23日から11月2日まで実施、15歳以上4万人以上から回答)では、「新型コロナウイルスワクチン接種がスイスで承認されたと想像してみてください。次のうち、あなたにはどれが当てはまりますか」と質問した。結果は以下の通りだった。

●すぐにワクチン接種を受ける 15.6%
●副作用がないことが証明されれば受ける 29%
●完全に予防されるなら受ける 7.6%
●周囲からの大きな圧力がある場合にのみ受ける 2.3%
●受けない=最初は待つ 17.5%
●受けない=ワクチン接種を受けない 28%

国内大手メディアTamediaが実施した世論調査(11月末実施、1万4千人以上が回答)でも「自発的にワクチン接種しますか」という質問に、27%がはい、26%がどちらかというと、はいと答え、25%がいいえ、17%がどちらかというと、いいえと答えた。男女別にみると、ワクチン接種をしたいと答えた男性は60%だったが、女性は46%にとどまったという。

否定的な反応も随分多いのは、なぜだろう。これについて、スイスの公共放送国内編集チームのミカエル・ペリコン副部長は、2つのことを指摘している。1つは、スイスでは西洋医療(現代医療)に不信感が抱かれ補完・代替医療の人気が高くなったため。もう1つは、ワクチン懐疑論が、口コミやユーチューブを通じて広まっているためだ(これは、2014年の政府の調査で明らかになったという)。

町の声を拾ったニュース番組が紹介した否定的な意見としては、「予防接種一般に懐疑的だから、新型コロナウイルスワクチン接種もしないと思う。それに、すべてが早く進み過ぎていて、ちょっと信用できない」「承認までの期間が早すぎる。接種はしない」「副作用に関してまだ何もわかっていない段階。絶対に接種は待つ」と、通常より承認が早いことに疑問を抱いている様子もうかがえた。


s-iwasawa01.jpg[執筆者]
岩澤里美
スイス在住ジャーナリスト。上智大学で修士号取得(教育学)後、教育・心理系雑誌の編集に携わる。イギリスの大学院博士課程留学を経て2001年よりチューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信の通信員として従事したのち、フリーランスで執筆を開始。スイスを中心にヨーロッパ各地での取材も続けている。得意分野は社会現象、ユニークな新ビジネス、文化で、執筆多数。数々のニュース系サイトほか、JAL国際線ファーストクラス機内誌『AGORA』、季刊『環境ビジネス』など雑誌にも寄稿。東京都認定のNPO 法人「在外ジャーナリスト協会(Global Press)」監事として、世界に住む日本人フリーランスジャーナリスト・ライターを支援している。www.satomi-iwasawa.com

20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国防長官候補巡る警察報告書を公表、17年の性的暴

ビジネス

10月の全国消費者物価、電気補助金などで2カ月連続

ワールド

サハリン2はエネルギー安保上重要、供給確保支障ない

ワールド

シンガポールGDP、第3四半期は前年比5.4%増に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中