最新記事

ワクチン

ロシアが誇る「スプートニクV」ワクチンは90%有効、でもプーチンは受けない

Putin Won't Take COVID Vaccine Russia Touts as 91% Effective, Kremlin Says

2020年11月25日(水)17時35分
エミリー・チャコール

なぜか国民と同じワクチンを受けないというプーチン Aleksey Nikolskyi/Kremlin/REUTERS

<自慢の新型コロナウイルスワクチンを自分は接種しない矛盾>

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、同国が開発を進めている新型コロナウイルスワクチン「スプートニクV」の接種を受ける予定はないとロシア政府報道官が発言した。ブルームバーグ・ポリティクスが11月24日に報じたところによれば、大統領報道官で大統領府副長官のドミトリー・ペスコフは記者団に対し、開発途中のワクチンを大統領に接種することは「あり得ない」と話したという。

ペスコフは、ロシアで最も開発が進んでいるスプートニクVの接種をすでに受けた約2万人のなかにプーチンも含まれているのかと聞かれ、「国内ではまだ大規模なワクチン接種は始まっていない。国家元首がみずから志願してワクチン接種に参加することはできない」と説明した。「それはあり得ない」とペスコフは続けた。「(安全性が)保証されていないワクチンを大統領が使用することはできない」

プーチンとロシア政府、さらにロシア保健省はこの数カ月、スプートニクVの効果と安全性を強調してきた。11月24日にも、ロシア直接投資基金(RDIR)のキリル・ドミトリエフ総裁が記者会見で「(海外向けの)第3相臨床試験で90%を超える有効率が確認されたワクチン」で、しかも最も安価だとスプートニクVの優位性を強調した。対するペスコフは、現時点におけるスプートニクVの限界を認めた格好だ。新型コロナウイルス感染症を予防するワクチンの開発を各国の研究者が競い合うなかで、安全性と有効性は大きな懸念材料となっている。

8月には国内承認

ロシア政府関係者は、同国が開発しているワクチンには安全性と有効性の両方が備わっていると述べているが、プーチンが8月にスプートニクVの国内使用を承認したのはあまりに性急過ぎると世界中の医療専門家が疑念や懸念を示していた。

承認時点でロシアの保健当局は、少数の人に対する初期段階の臨床試験などを経ただけだった。この承認により、2021年はじめまで続く予定の「承認後」試験を実施しながら、医療従事者などのリスクの高い人にこのワクチンを接種できるようになった。

スプートニクV開発の関係者は11月24日、2回の接種を必要とするこのワクチンのフェーズ3臨床試験への参加を志願した計4万人のうち、半数以上が1回目の接種を受け、1万9000人が1回目と2回目の接種を受けたことを明らかにした。関係者によれば、治験中に「予想外の有害事象」は発生せず、28日後に実施した分析では91.4%の有効率が示されたという。

スプートニクVはまだ、大規模な接種を可能にする正式な承認を受けていない。11月19日には、世界保健機関(WHO)のロシア代表メリタ・ヴイノビッチの談話として、スプートニクVを開発する製薬会社がWHOに承認を申請したと報じられた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中