インドで「光るキノコ」の新種が見つかる......地元では、懐中電灯の代わり
地域住民から「電気キノコ」と呼ばれている...... Photo by Steve Axford.
<インド北東部メーガーラヤ州の竹林で発光菌類の新種が見つかった。地元では、この生物が生えている竹串が懐中電灯の代わりに利用されているという...... >
インド北東部メーガーラヤ州の竹林で発光菌類の新種が見つかった。ヌナワタケ属(ロリドマイシス)の一種で、枯れたマダケ(フィロスタキス)に生息することから、「ロリドマイシス・フィロスタキス」と命名されている。
地元では、懐中電灯の代わりに利用されているという
中国科学院とインド・西ベンガル州立大学の共同研究チームは、インド北東部アッサム地方で2週間にわたる実地調査を行った。この地域では多種多様な菌類が生息し、なかでも、地域住民から「電気キノコ」と呼ばれる生物は、研究チームの関心を惹き付けた。
この生物は枯れた竹に生息し、夜になると、生物発光により、菌糸体から柄にかけて緑の光を発する。そのため、地元では、夜間、この生物が生えている竹串が懐中電灯の代わりに利用されているという。
研究チームは、この生物のサンプルを採取して研究室に持ち帰り、詳しく分析した。その結果、形態学的特徴と系統発生解析から、ヌナワタケ属の新種と同定された。一連の研究成果は2020年9月、学術雑誌「ファイトタクサ」で発表されている。
光で昆虫を惹き付けて自らの胞子を拡散させるため
ヌナワタケ属は非常に繊細で、高温多湿の環境を好む。これまでに12種が確認されており、そのうち5種が生物発光する。インドでヌナワタケ属の菌類が見つかったのは、今回が初めてだ。
発光菌類は、光で昆虫を惹き付けて自らの胞子を拡散させようとする。それゆえ、一般に、特定の昆虫との相互作用を通じて進化する「共進化」を経てきたと考えられている。
この生物は、枯れたマダケのみに生息していた。研究チームは「この生物が好む特別な要素が枯れた竹に存在するのかもしれない」として、さらに詳しく調べている。
地球には220万〜380万種の菌類が存在するとみられ、これまでに約12万種が同定されている。そのうち生物発光するのはおよそ100種で、欧州や北南米、東南アジアなどの温帯・熱帯地域で見つかっている。日本でも、ヤコウダケやシイノトモシビタケなどが生息する。
広大な国土を持つインドでは菌類の調査は十分にすすんでおらず、国内で発光菌類の生息が確認された例はまだわずかだ。1999年1月に西ガーツ山脈、2012年7月に東ガーツ山脈、2012年9月にケーララ州で計4件が確認されている。研究チームは、実際にインドで生息する発光菌類の個体数はもっと多いとみて、今後も調査をすすめる方針だ。