最新記事

アメリカ社会

アメリカ大統領選挙でのトランプ敗北と消え去ることのない「トランプ主義」

2020年11月12日(木)11時45分

トランプ氏が米大統領選で地滑り的敗北を喫するとの世論調査の予想を覆す善戦ぶりを示したのは明らかで、トランプ氏支持層は多くの観測筋の見立てよりも規模が大きく、忠誠心が強かったことが浮き彫りになった。写真は9月、ノースカロライナ州ファイエットビルで開かれたトランプ氏の選挙集会で撮影(2020年 ロイター/Tom Brenner)

トランプ米大統領は10月31日、大統領選の投票を前に激戦の東部ペンシルベニア州で開いた集会で「再び赤い大波が来る」とぶち上げ、今回も専門家の予想が外れて自分が勝つと予想した。

メディアの報道によると、トランプ氏は接戦の末、民主党候補のバイデン前副大統領に負けた。しかし、地滑り的敗北を喫するとの世論調査の予想を覆す善戦ぶりを示したのは明らかで、トランプ氏支持層は多くの観測筋の見立てよりも規模が大きく、忠誠心が強かったことが浮き彫りになった。

潰えた民主党の期待

民主党は、トランプ氏の1期目に混乱が続き、国民を分断するような選挙戦が行われたことに対して、有権者がきっぱりと「否」を突きつけると期待していた。しかし、実際にはトランプ氏は暫定集計で2016年の前回選挙を約730万票上回る票を獲得した。

トランプ氏は昨年「ウクライナ疑惑」で弾劾裁判を受け、今年に入ると新型コロナウイルス感染へのずさんな対応や警官による黒人暴行死事件を巡る抗議行動の拡大に見舞われたが、それでも共和党は上院で僅差ながら過半数の議席を確保する可能性がある。共和党は、民主党が制する下院でも議席数を増やした。

集計はまだ終わっていないが、「トランプ主義」の終焉という民主党の期待は潰えた。バイデン氏の勝利が確定しても、共和党が上院で過半数を維持すれば、次期大統領は法案の成立や、判事および政権幹部の指名承認獲得を進める上で手足を縛られるだろう。トランプ氏自身が今後どうなろうとも、大衆迎合的な政治というトランプ氏の手法の吸引力は残り続け、無視するわけにはいかないと、民主党と共和党の関係者は口をそろえる。

フロリダ州共和党のジョー・グルーターズ委員長は、新型コロナの大流行時でも自由な経済活動を求めるトランプ氏のメッセージが、多くの有権者を獲得したと述べた。「未来に対するトランプ氏の前向きなメッセージと米国第一を進める努力ゆえに、人々は同氏に票を入れた」とグルーターズは言う。

「人々は税を望んでいない、ロックダウン(都市封鎖)も欲していない。自由と解放を望んでいる。自分たちのコミュニティーが焼け野原になるのも見たくないんだ」と話した。焼け野原になるとは、警官による殺害への抗議行動の中で発生した略奪や放火のことを指す。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:イスラエル軍の秘密情報部隊が関与か、ヒズ

ワールド

豪8月就業者数は予想上回る、失業率横ばい 労働市場

ワールド

自社製品か確認できずとアイコム、レバノンの無線機爆

ワールド

深セン日本人学校の児童死亡、中国に安全確保強く求め
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    クローン病と潰瘍性大腸炎...手ごわい炎症性腸疾患に高まる【新たな治療法】の期待
  • 2
    北朝鮮で10代少女が逮捕、見せしめに...視聴した「禁断の韓国ドラマ」とは?
  • 3
    「ポケットの中の爆弾」が一斉に大量爆発、イスラエルのハイテク攻撃か
  • 4
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 5
    浮橋に集ったロシア兵「多数を一蹴」の瞬間...HIMARS…
  • 6
    「トランプ暗殺未遂」容疑者ラウスとクルックス、殺…
  • 7
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優…
  • 8
    地震の恩恵? 「地震が金塊を作っているかもしれない…
  • 9
    岸田政権「円高容認」の過ち...日本経済の成長率を高…
  • 10
    米大統領選を左右するかもしれない「ハリスの大笑い」
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 3
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢な処刑」、少女が生き延びるのは極めて難しい
  • 4
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優…
  • 5
    【クイズ】自殺率が最も高い国は?
  • 6
    北朝鮮で10代少女が逮捕、見せしめに...視聴した「禁…
  • 7
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライ…
  • 8
    エリザベス女王とフィリップ殿下の銅像が完成...「誰…
  • 9
    ウィリアムとヘンリーの間に「信頼はない」...近い将…
  • 10
    世界に離散、大富豪も多い...「ユダヤ」とは一体何な…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 3
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 4
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 5
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 6
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 7
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 8
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
  • 9
    止まらない爆発、巨大な煙...ウクライナの「すさまじ…
  • 10
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中