米大統領選でバイデンが勝っても、欧州は「トランプ以前」には戻れない
LAST CALL FOR TRANSATLANTICISM
トランプ後の米欧関係には、防衛費の負担と対中関係のほかにも、デジタル技術におけるEUの主権と自己決定権という第3の難題がある。EUのデジタル市場は、事実上アメリカの大手テクノロジー企業に支配されている。従ってEUがデータに関して主権を確保したければ、EU独自のプラットフォームやクラウドを構築し、域内で活動する全プロバイダーをEUのルールに従わせる必要がある。
安全保障の観点からも、ヨーロッパの市民と企業のデータの保管場所は、ヨーロッパに置かれなければならない。こうした問題は、米欧間で大きな対立の火種となるだろう。
だが少なくともバイデン政権では、ヨーロッパは再び同盟国として扱われ、多国間主義が軽視されることはなくなりそうだ。アメリカは気候変動対策の国際的枠組みや、WHOなどの国際機関に復帰するだろう。
だが、ここでもヨーロッパは幻想を抱いてはならない。4年間のトランプ時代に、米欧同盟が崩壊すればどうなるかを垣間見たはずだ。21世紀の残りは、超大国同士が対立し、不安定化がより進む時代になるかもしれないし、大国間のパワーバランスが保たれる時代になるかもしれない。
いずれの場合も、EUはその一角を占める安全保障と地政学のグローバルプレーヤーとなれるのか。もちろん、答えはイエス。ただしそのためには、バイデン時代がもたらすチャンスをつかむ意思と能力が必要だ。
©Project Syndicate
<2020年11月10日号掲載>
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