最新記事

2020米大統領選

米大統領選でバイデンが勝っても、欧州は「トランプ以前」には戻れない

LAST CALL FOR TRANSATLANTICISM

2020年11月3日(火)16時20分
ヨシュカ・フィッシャー(元ドイツ外相)

トランプ後の米欧関係には、防衛費の負担と対中関係のほかにも、デジタル技術におけるEUの主権と自己決定権という第3の難題がある。EUのデジタル市場は、事実上アメリカの大手テクノロジー企業に支配されている。従ってEUがデータに関して主権を確保したければ、EU独自のプラットフォームやクラウドを構築し、域内で活動する全プロバイダーをEUのルールに従わせる必要がある。

安全保障の観点からも、ヨーロッパの市民と企業のデータの保管場所は、ヨーロッパに置かれなければならない。こうした問題は、米欧間で大きな対立の火種となるだろう。

だが少なくともバイデン政権では、ヨーロッパは再び同盟国として扱われ、多国間主義が軽視されることはなくなりそうだ。アメリカは気候変動対策の国際的枠組みや、WHOなどの国際機関に復帰するだろう。

だが、ここでもヨーロッパは幻想を抱いてはならない。4年間のトランプ時代に、米欧同盟が崩壊すればどうなるかを垣間見たはずだ。21世紀の残りは、超大国同士が対立し、不安定化がより進む時代になるかもしれないし、大国間のパワーバランスが保たれる時代になるかもしれない。

いずれの場合も、EUはその一角を占める安全保障と地政学のグローバルプレーヤーとなれるのか。もちろん、答えはイエス。ただしそのためには、バイデン時代がもたらすチャンスをつかむ意思と能力が必要だ。

©Project Syndicate

<2020年11月10日号掲載>

【関連記事】
トランプが大統領選の結果にごねれば、笑うのは中国だ
さらにエスカレートするトランプの「コロナ詐欺」

20250121issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年1月21日号(1月15日発売)は「トランプ新政権ガイド」特集。1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響を読む


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中