米大統領選でバイデンが勝っても、欧州は「トランプ以前」には戻れない
LAST CALL FOR TRANSATLANTICISM
「悪夢」の4年間に学んだことをヨーロッパは生かすべき CBIES/ISTOCK
<ヨーロッパがアメリカの安全保障にただ乗りする時代は終わった。例えバイデン大統領が誕生しても、ヨーロッパは幻想を抱いてはならない―ー。>
アメリカ大統領選は、2020年の世界政治の最も重要なイベントであり、アメリカの民主主義だけでなく、米欧が協調する「大西洋主義」の命運をも決定付ける出来事となる。
トランプ大統領が再選されれば、大西洋主義が今後4年続くこと、あるいはアメリカとヨーロッパが今後も有意義な形で一致することが疑問視されるだろう。それは災難続きだった今年、世界に降り掛かる真の災難となる。
幸い民主党の対立候補であるジョー・バイデン前副大統領は、世論調査で一貫してリードを保ってきた。ということは、地政学的なアクターとしての米欧同盟が復活するチャンスはある。問題は、トランプ後の米欧関係がどのようなものになるかだ。
トランプ以前の時代に戻ることはあり得ない。ヨーロッパがアメリカの安全保障にただ乗りする時代は終わった。ヨーロッパのNATO加盟国が、集団安全保障体制を維持するために公平な負担をしていないという不満は、トランプだけが抱いてきたものではない。また、アメリカの外交政策のアジアシフトも、トランプではなくオバマ前大統領の時代に始まったものだ。
バイデン大統領の誕生後も、対中関係はアメリカとヨーロッパにとって最大の戦略的課題であり続けるだろう。中国との対立と「デカップリング(切り離し)」が深まるのか、貿易と協力へと進むのか、それともその両方が混ざったものになるのか。
中国政府の香港とウイグル人など少数民族に対する扱いは、この複雑なバランスに、欧米の価値観を持ち込む。また、台湾問題は引き続き米中対立を軍事的対立へとエスカレートさせる危険性をはらんでいる。
米欧の協力は明らかに見直しが必要だ。だが、そのためには、ヨーロッパがグローバルプレーヤーとしての政治力と軍事力を身に付けなければならない。ヨーロッパ(特にドイツ)の指導者たちは幻想を捨てる必要がある。
バイデン政権下においても、ヨーロッパが安全保障への関与を深めることが、米欧パートナーシップを再始動させる条件となるだろう。