コロナに感染でブレグジット交渉中断、あおりを受けてフィッシュ&チップスが食卓から消える?
英国へのタラの供給を止めるとEU側は伝えている...... piola666 -iStock
<ブレグジット移行期間終了まであと数週間と迫ったが、英国とEUの間にはいまだに貿易協定が結ばれていない。>
タイムリミット迫る貿易交渉、コロナで中断
英国は今年1月に欧州連合(EU)から離脱し、移行期間も来月一杯で終了となる。しかしこのままでは英国の国民食ともいえるフィッシュ&チップスが食卓から消える可能性がある、とフィッシュ&チップスの業界団体NFFFは警告している。
移行期間終了まであと数週間と迫ったが、英国とEUの間にはいまだに貿易協定が結ばれていない。両者はこれまで、離脱後も関税がかからない自由貿易協定(FTA)の締結に向けて詳細を話し合ってきたが、お互いの要求を譲らずに暗礁に乗り上げている状態だ。
貿易交渉が遅々として進まない理由の一つに、漁業権がある。現在はEUの共通漁業政策により、海岸から12海里以上離れていれば、欧州の漁船は英国の海域へ無制限に入ることができる。英BBCによると現在は、英国海域の漁獲量のうち60%が外国船によって水揚げされている。しかし英国は、ブレグジット後には英国の排他的経済水域内での漁獲量にある程度の規制を設けたい考えだ。
タイムリミットが近づく中、AP通信によると、11月19日にEU側の交渉団の1人が新型コロナウイルス感染症の検査で陽性となったために、交渉が一時中断されることになった。英国の首相官邸がAP通信に話したところによると、リモートでの交渉は続けるが、直接顔を合わせての話し合いがいつ再開できるかは不明のようだ。
英国民食を救うために立ち上がったグリーンランド
このままいけば、FTAを締結できずに移行期間が終了となる可能性も考えられる。万が一そうなった場合、英国とEUは世界貿易機関が定めた基本的な貿易協定にのっとって取り引きを行うことになる。つまり、これまで英国がEUの一員として受けてきた恩恵はすべて失われる。
さらに英エクスプレス紙によると、英国海域での漁獲が許可されないのであれば、英国へのタラの供給を止めるとEU側は脅しているという。フィッシュ&チップスでもっともよく使われる魚だ。また、年内に貿易協定が締結できなかった場合は、魚介類に巨額の関税をかける意向を示しているという。
こうした状況の中、救世主となりそうなのがグリーンランドだ。グリーンランドはEU加盟国であるデンマーク領ではあるものの、独自の自治を有しており、住民投票の結果、1985年にEUの前身である当時の欧州共同体(EC)から離脱した。その後、ECとFTAを締結している。