最新記事

香港

【香港人の今3】「中国製でないほうが、品質がよくて安い」・「黄色経済圏」支持者

RISING LIKE A PHOENIX

2020年11月27日(金)17時10分
ビオラ・カン(文)、チャン・ロンヘイ(写真)、雨宮透貴(写真)

「黄色経済圏」支持者 Rob(41)& Laura(36) PHOTOGRAPH BY CHAN LONG HEI

<香港の状況は絶望的に悪化している。11月23日には民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)らが収監された。香港人は今、何を思い、どう反抗しているのか。16人の本音と素顔を伝える(3)>

「黄色経済圏」支持者 Rob(41)& Laura(36)

「和理非(平和・理性・非暴力)」派を自称する2人は、よく逃亡犯条例改正案反対デモに姿を見せた。今年になって街で警察に捕まるリスクが高まるようになり、安全な範囲で政治的信念を貫けるよう「黄色経済圏」だけで消費することにした。

黄色経済圏とは、民主化運動の支持者が政治理念の近い店でのみお金を使うこと。中国製品を買わないように商品の産地を確認する。外出はバスに乗り、デモ期間中に警察に協力した地下鉄はボイコットする。

デモを支持する飲食店・商店を意味する「黄色い店」でお金を使うため、店の詳細を調べる──。2人は日常消費の8割を黄色経済圏に投じている。

「調べるのは面倒だけど、だんだんと慣れる。しかも中国製でないほうが、品質がよくて安い製品が多い」

黄色経済圏の支持者は増える一方だ。そして、中国資金や政府支持派の店の業績は右肩下がりを続ける。香港を代表する外食大手「美心集団(マキシムグループ)」は、創業者の長女がデモ隊を「暴力分子」だと発言したことで、今年上半期に5000万ドルの損失を出した。

最初に踏み出した一歩が、どんな結果につながるのか分からないと、Robは言う。少なくとも種をまけば、芽生える時はいつか来る。

magHK20201127-3-2.jpg

元「香港衆志」主席 羅冠聡(27) PHOTOGRAPH BY YUKITAKA AMEMIYA

元「香港衆志」主席 羅冠聡(27)

2014年の大規模デモ「雨傘運動」で名前を知られ、2016年には民主化を求める政党・香港衆志(デモシスト)を創設し最年少の立法会議員となったが、宣誓日に資格が取り消された。

昨年、逃亡犯条例改正案反対デモの最中に米エール大学に進学。いったん香港に戻り、今年の夏にイギリスへ逃れた羅冠聡(ネイサン・ロー)は、香港民主化の必要性を世界に訴える仕事に取り組んでいる。

出国は決して簡単な選択ではなかった。親戚や友人と家族に別れを告げる機会もなく、極秘で香港から旅立った。関係を断つことを公表することしか、親愛なる人たちの安全を守るすべがなかった。

離れているから、共に戦って来た仲間が逮捕されるのを見ると、心配と怒りが込み上げた。

「周庭(アグネス・チョウ)が国家安全維持法で逮捕されたのは、明らかに政治的抑圧だ」

香港の民主化運動と国際社会をつなげることが彼の使命だ。中国外相である王毅(ワン・イー)の欧州歴訪を知るとすぐ現地に飛び、王より一歩先に各国の官僚を説得した。訪問した王に対して、各国は以前より明らかに強い態度で臨んだ。

「香港の声を広める責任がある」と、羅は言う。「どんなに小さなことでも香港に変化を与えたい」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日鉄社長、米政府との認識「擦り合ってきている」 U

ビジネス

アングル:デフレ下で価格競争激化、中国の飲食店に大

ワールド

インド総合PMI、3月速報値は58.6に低下 サー

ワールド

欧州で米国旅行離れ、反トランプ感情が影響 カナダの
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平
特集:2025年の大谷翔平
2025年3月25日号(3/18発売)

連覇を目指し、初の東京ドーム開幕戦に臨むドジャース。「二刀流」復帰の大谷とチームをアメリカはこうみる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放すオーナーが過去最高ペースで増加中
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    ロシア軍用工場、HIMARS爆撃で全焼...クラスター弾が…
  • 5
    コレステロールが老化を遅らせていた...スーパーエイ…
  • 6
    ドジャース「破産からの復活」、成功の秘訣は「財力…
  • 7
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 8
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    インド株から中国株へ、「外国人投資家」の急速なシ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャース・ロバーツ監督が大絶賛、西麻布の焼肉店はどんな店?
  • 4
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    失墜テスラにダブルパンチ...販売不振に続く「保険料…
  • 7
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 8
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 10
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中