【香港人の今3】「中国製でないほうが、品質がよくて安い」・「黄色経済圏」支持者
RISING LIKE A PHOENIX
「黄色経済圏」支持者 Rob(41)& Laura(36) PHOTOGRAPH BY CHAN LONG HEI
<香港の状況は絶望的に悪化している。11月23日には民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)らが収監された。香港人は今、何を思い、どう反抗しているのか。16人の本音と素顔を伝える(3)>
「黄色経済圏」支持者 Rob(41)& Laura(36)
「和理非(平和・理性・非暴力)」派を自称する2人は、よく逃亡犯条例改正案反対デモに姿を見せた。今年になって街で警察に捕まるリスクが高まるようになり、安全な範囲で政治的信念を貫けるよう「黄色経済圏」だけで消費することにした。
黄色経済圏とは、民主化運動の支持者が政治理念の近い店でのみお金を使うこと。中国製品を買わないように商品の産地を確認する。外出はバスに乗り、デモ期間中に警察に協力した地下鉄はボイコットする。
デモを支持する飲食店・商店を意味する「黄色い店」でお金を使うため、店の詳細を調べる──。2人は日常消費の8割を黄色経済圏に投じている。
「調べるのは面倒だけど、だんだんと慣れる。しかも中国製でないほうが、品質がよくて安い製品が多い」
黄色経済圏の支持者は増える一方だ。そして、中国資金や政府支持派の店の業績は右肩下がりを続ける。香港を代表する外食大手「美心集団(マキシムグループ)」は、創業者の長女がデモ隊を「暴力分子」だと発言したことで、今年上半期に5000万ドルの損失を出した。
最初に踏み出した一歩が、どんな結果につながるのか分からないと、Robは言う。少なくとも種をまけば、芽生える時はいつか来る。
元「香港衆志」主席 羅冠聡(27)
2014年の大規模デモ「雨傘運動」で名前を知られ、2016年には民主化を求める政党・香港衆志(デモシスト)を創設し最年少の立法会議員となったが、宣誓日に資格が取り消された。
昨年、逃亡犯条例改正案反対デモの最中に米エール大学に進学。いったん香港に戻り、今年の夏にイギリスへ逃れた羅冠聡(ネイサン・ロー)は、香港民主化の必要性を世界に訴える仕事に取り組んでいる。
出国は決して簡単な選択ではなかった。親戚や友人と家族に別れを告げる機会もなく、極秘で香港から旅立った。関係を断つことを公表することしか、親愛なる人たちの安全を守るすべがなかった。
離れているから、共に戦って来た仲間が逮捕されるのを見ると、心配と怒りが込み上げた。
「周庭(アグネス・チョウ)が国家安全維持法で逮捕されたのは、明らかに政治的抑圧だ」
香港の民主化運動と国際社会をつなげることが彼の使命だ。中国外相である王毅(ワン・イー)の欧州歴訪を知るとすぐ現地に飛び、王より一歩先に各国の官僚を説得した。訪問した王に対して、各国は以前より明らかに強い態度で臨んだ。
「香港の声を広める責任がある」と、羅は言う。「どんなに小さなことでも香港に変化を与えたい」