【香港人の今2】「殴り殺す」と警察に脅された友人が、台湾密航に失敗した・20歳勇武派
RISING LIKE A PHOENIX
勇武派の抗議者 Edward(20) PHOTOGRAPH BY CHAN LONG HEI
<香港の状況は絶望的に悪化している。11月23日には民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)らが収監された。香港人は今、何を思い、どう反抗しているのか。16人の本音と素顔を伝える(2)>
勇武派の抗議者 Edward(20)
2014年の雨傘運動の時、まだ中学2年生だった。その年の9月、香港警察が近年の民主化デモでは初めて催涙ガスを使用した日に先輩と現場で催涙ガスを浴び、そこから社会運動への関心が芽生えた。
5年後の2019年、平和なデモから道路封鎖や火炎瓶投げまで、あらゆることをした。先日、台湾への密航失敗で中国に拘留された香港人12人のうちの1人も仲間だ。
昨年10月、この友人は抗議活動で逮捕され、拘留中に警官から「殴り殺す」と脅された。保釈後、音信不通となった友人から連絡が来た。「(密航の)船に乗る前は電話してこないようにと言われた。もし3日後に連絡が来なければ成功したと」
しかし友人は12人の中で数少ない10代の逮捕者になった。
「瓦全(がぜん)で生き延びるより、玉砕したほうがいい」──抗議活動の先頭で戦う勇武派の信念である。
とはいえ勢いだけでなく、事前に配置や行動、目標について綿密に打ち合わせする。目の前で警察官が実弾を発射しても怖くないが、仲間の安否が唯一の心配事だ。
「友人がいきなり姿を消し、逮捕され、逃亡し、亡くなる......。背負ったものが多過ぎて後戻りできないが、前へ進むしかない」。生き抜いた今、生きる意味と責任を語る。
漫画家 阿塗(38)
時事漫画を執筆して8年。香港国家安全維持法が施行された途端、阿塗(ア・トー)は新聞や雑誌関係の仕事がなくなった。作品が時代のネガティブな面を風刺するものだからだ。
これまで社会の現状をテーマに、広東語の話し言葉で漫画を描き続けてきた。読者の多くは香港が大好きな香港人──彼自身も同じだ。「香港という街が大好き。この街の自由があるから、今の僕がいる」
しかし同法の施行後、約1年間コラムを連載してきた「明報週刊」がリニューアル名目で阿塗を含む政治風刺画家4人のコラムを打ち切った。6年間も連載したヤフー香港も阿塗ら7人のコラムを終了。作品の発表先がなくなった彼は、新作をSNSで有料公開して窮地を打開した。
街の息遣いも生活の雰囲気も阿塗の創作に欠かせない。香港を離れることなく、最も近い視点からこの街を描きたい。
「料理と同様、いつも強火を使う必要はない。弱火でじっくり煮込んでもおいしく仕上げられる。大事なのはその火種が残ること。そしていつでも派手に再燃できること」
ユーモアのある比喩に秘めた知恵は、暗闇を導くともしびのように、絶望の中にいる人々を希望へといざなう。