最新記事

動物

コロナが改めて浮き彫りにした「毛皮工場」の存在......年間約1億匹もの動物が屠殺されている

2020年11月16日(月)16時00分
松岡由希子

欧州では、「毛皮工場」を禁止する動きが広がってきていたが...... Ritzau ScanpixREUTERS

<デンマークで1700万匹のミンクが殺処分の対象になったことで、あらためて「毛皮工場」の存在に注目が集まっている。ミンクやキツネ、アライグマなど、年間約1億匹もの動物が劣悪な環境で飼育され、屠殺されている......>

デンマーク国立血清研究所(SSI)は、2020年11月、家畜のミンクからヒトに感染した新型コロナウイルスの変異株がデンマーク国内で確認されたことを明らかにした。

6月8日から10月18日までの間、北部の北ユラン地域を中心に214名からこの変異株が検出されたという。この変異株には新型コロナウイルスの抗体をつくる能力を弱める作用があり、「現在開発中のワクチンの有効性を脅かすおそれもある」と警鐘を鳴らしている。

デンマークで1700万匹のミンクが殺処分の対象になった

デンマークでは、6月以降、北ユラン地域のミンク飼育場で新型コロナウイルスに感染したミンクが相次いで確認されており、その数は11月6日時点で216カ所となっている。

デンマーク政府は、10月1日から、新型コロナウイルスへの感染が確認された飼育場およびその半径7.8キロ圏内にある飼育場を対象にミンクの殺処分をすすめてきたが、デンマーク国立血清研究所の調査結果を受けて、11月4日、「国内で飼育されているすべてのミンクの殺処分を義務づける」と発表した。殺処分の対象となるのは最大で1700万匹にのぼる。

しかし、その後、政府には感染が確認されていない農場にまでミンクの殺処分を命じる法的権限がないことが判明し、10日、この命令を撤回して、感染が確認された飼育場から半径7.8キロ圏外の飼育場に対しては、全ミンクの殺処分を勧告するにとどめた。

ミンクへの新型コロナウイルスの感染は、デンマーク以外でも確認されている。スペイン北東部アラゴン州の飼育場では、7月16日、新型コロナウイルスの集団感染により、ミンク9万2700匹の殺処分が命じられた。オランダでも、南東部フェンラユの飼育場7カ所で新型コロナウイルスへの感染が確認され、飼育中のすべてのミンクが殺処分されている。

欧州では、「毛皮工場」を禁止する動きが広がってきた

アニマルウェルフェア(動物福祉)の啓発に取り組む非営利団体「フォー・パウズ・インターナショナル」によると、市場で流通している毛皮の95%が飼育場で飼育された動物によるものだ。ミンクやキツネ、アライグマなど、年間約1億匹もの動物が劣悪な環境で飼育され、屠殺されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ関税巡る市場の懸念後退 猶予期間設定で発動

ビジネス

米経済に「スタグフレーション」リスク=セントルイス

ビジネス

金、今年10度目の最高値更新 貿易戦争への懸念で安

ビジネス

アトランタ連銀総裁、年内0.5%利下げ予想 広範な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 9
    トランプ政権の外圧で「欧州経済は回復」、日本経済…
  • 10
    ロシアは既に窮地にある...西側がなぜか「見て見ぬふ…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中